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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by - 2025.04.26,Sat
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Posted by Hiroki Matsuura - 2017.12.23,Sat
Clinical PictureがAcceptされました(29本目)
今回は皮膚科関連のClinical PictureがAcceptされました。
タイトルは「Milian's ear sign」です。

Milian’s ear signは顔面の蜂窩織炎と丹毒を鑑別する際に有用な所見です。
まず丹毒と蜂窩織炎ですが、丹毒は真皮浅層に生じる炎症である一方で蜂窩織炎は真皮深層から皮下組織を炎症の主座とする違いがあります。丹毒の方が発赤の境界が比較的明瞭と言われますが、実際患者を目の前にするとわからない…結構悩ましい問題です。

耳介は真皮が薄く皮下脂肪組織がありません。皮下脂肪組織がないということは耳に蜂窩織炎は起こりえないのです。すなわち耳介と顔面とが同時に発赤するという状態は、炎症が比較的浅い層をつたって波及したということになります。

すなわち浅い層=真皮浅層の炎症であるので「丹毒」という診断に至ります。


元記事のリンクはこちら(追記:2018年7月6日)

ただし注意点があります。
耳介が赤い=丹毒ではありません。

以前Milian's ear signとたかをくくったがために、水疱が外耳道にのみ存在するRamsay-Hunt症候群を見逃しかけました。耳介が赤い場合には神経所見や水疱の有無を十分確認して診断を下す必要があります。

掲載雑誌は英国内科学会の発行する内科系雑誌「Quarterly Journal of Medicine(IF 3.1)」です。

100本まで残り71です。
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Posted by Hiroki Matsuura - 2017.12.10,Sun
Clinical Picture(Case Report)がAcceptされました(28本目)
今回はダニ媒介感染症である日本紅斑熱のCase ReportがAcceptされました。
タイトルは「Family cluster of Japanese spotted feverです。

掲載雑誌はケース・ウェスタン・リザーブ大学が発行する熱帯医学・衛生専門誌として著名な「American Journal of Tropical Medicine and Hygiene(IF 2.549」です。

「Japanese spotted fever(日本紅斑熱)」は1984年徳島県阿南市で馬原文彦先生によって発見された紅斑熱群リケッチア感染症です。近年感染者数が増加しており公衆衛生上大きな脅威となるダニ媒介疾患として知られています。特徴的な紅斑、痂皮、肝障害を3徴としますが、痂皮に関しては見付からなかったケースが半数に上り、ダニに咬まれた自覚のある人も非常に少ないという報告があります。リケッチアは細胞内寄生菌でありミノサイクリンドキシサイクリン(他にニューキノロン系)が有効ですが、ペニシリンなどは完全に無効であるため、適切な治療開始が遅れるとDICに陥り死亡します。

今回の症例の核は幾つかあるのですが、まずは香川県における日本紅斑熱の発症状況を紹介します。実は香川県を除く四国3件は日本紅斑熱が随分前から報告されていました(徳島:1984年、高知:1986年、愛媛:2003年)。しかし香川県で初めて本症が報告されたのはなんと2013年になってからです。当院で初めて発見されたのは2014年であり、県下2例目でした。今回の症例は私が研修医2年目の救急当番中に遭遇したCaseであり、夫婦同時に本症を発症し非常に重篤な経過を辿っただけでなく、さらにその隣人が本症を発症したCluster症例でした。

これまで本症が発生したことのない地域であったことから、医療者だけでなく地域住民にとっても非常に衝撃的な出来事として受け止められました(発生地域の野焼きを強行しようとした猛者まで…)。またダニに咬まれたと受診される方も急増しました。予防啓発として自治体が放送を流してくれるなど、色々なことが変化し、感染症診療が地域に与える影響の大きさを肌で実感した印象的な症例でした。

100本まで残り72本です。
Posted by Hiroki Matsuura - 2017.11.24,Fri
Clinical PictureがAcceptされました(27本目)
今回は極めて珍しい消化器及び漢方医学関連のClinical PictureがAcceptされました。
タイトルは「Idiopathic mesenteric phlebosclerosisです。

「Idiopathic mesenteric phlebosclerosis」は本邦で初めて報告され、近年疾患概念が確立した非常に特徴的な所見を有する消化管疾患です。日本語では「特発性腸間膜静脈硬化症」と呼ばれます。

症状としては長期にわたる腹痛血便があり、回盲部から横行結腸にかけて大腸内視鏡所見で大腸粘膜が深青色、黒紫色に変化し、粘膜の菲薄化や潰瘍などが認められます。またCTでは腸間膜静脈の著明な石灰化が描出されます。

これらの原因は長らく不明であったのですが、現在では漢方薬の長期内服が発症要因であることが判明しています。原因となる漢方薬の成分は山梔子(サンシシ)であり、サンシシが有するゲニピンが回盲部で吸収される際に腸内細菌の働きで着色、さらに吸収される際に腸間膜静脈に沈着して長期間にわたり炎症を引き起こすことから石灰化を生じ、慢性的な腸管虚血を引き起こすものとされています。大抵は漢方薬内服中止で軽快しますが、一部では改善が認められず外科的切除を必要とする症例もあるそうです。

なお、ほとんどの症例は漢方製剤を使用可能な東アジアに偏っています(1例だけカナダからの報告があるものの患者は台湾からの移民)。


元記事のリンクはこちら(追記:2018年4月20日)

原因となる漢方薬はサンシシの含まれている以下が代表的です(番号はツムラ)。

加味逍遙散(24)、加味帰脾湯(137)、防風通聖散(62)、清上防風湯(58)、清肺湯(90)、黄連解毒湯(15)、荊芥連翹湯(50)、梔子柏皮湯(314)、辛夷清肺湯(104)、五淋散(56)、柴胡清肝湯(80)、竜胆瀉肝湯(76)、温清飲(57)など

掲載雑誌は久々に英国内科学会の発行する内科系雑誌「Quarterly Journal of Medicine(IF 3.1)」です。QJMはAcceptが累計20本になりました。

100本まで残り73です。
Posted by Hiroki Matsuura - 2017.11.17,Fri
Clinical PictureがAcceptされました(25本目、26本目)
今回は極めて稀な寄生虫と呼吸器疾患のClinical Pictureが2本同時にAcceptされました。
タイトルは「Colonic Anisakiasis」「Pulmonary Alveolar Proteinosis: Crazy-paving appearance」です。

アニサキス症はサバやイカなどの生食で感染し、激しい腹痛を伴うことで知られています。最近ではSushi, Sashimiなどの日本文化の認知が進み、感染例の報告が海外からも散見されます。アニサキス症の大部分は上部消化管への感染ですが、非常に稀に大腸への感染が認められる場合があります(アニサキス症全体の0.1-0.9%という報告あり)。胃アニサキス症では食後数時間後から発症しますが、大腸アニサキス症では2週間から1ヶ月かけて症状がでることが多いようです。健診で無症候性に発見されたり、腫瘍を疑われて実施されたCSで見付かったというCaseがちらほら見られます。

Pulmonary Alveolar Proteinosis」は国試頻出疾患である「肺胞蛋白症」です。本邦には800名程度の患者がいるとされる非常に稀な疾患ですが、治療可能な疾患として国試でもよく取り上げられます。近年では病態理解も進み、GM-CSF欠乏や抗GM-CSF抗体産生によってサーファクタント生成障害が起きることが病因とされています。気管支鏡を用いた肺洗浄だけでなくGM-CSF製剤の経静脈的投与/吸入治療が有効です。今回の症例では患者のバイタルサインは非常に安定しているものの、胸部レントゲンで著明なスリガラス影が存在し、胸部CTで特徴的なCrazy-paving appearanceが認められたことが診断のきっかけとなりました。Crazy-paving appearance自体はARDSサルコイドーシス、一部の間質性肺炎などで認められますが肺胞蛋白症を鑑別の一つとして忘れないようにしましょう。

今回どちらの症例も掲載雑誌は"Green Journal"という別称を持つ内科系雑誌「American Journal of Medicine(IF 5.55)」です。

100本まで残り74です。
Posted by Hiroki Matsuura - 2017.10.11,Wed
Clinical PictureがAcceptされました(24本目)
今回は食道疾患に関するClinical PictureがAcceptされました。
タイトルはEosinophilic Esophagitis; Crepe Paper-Like Appearanceです。

Eosinophilic Esophagitis」は和訳するとそのまま「好酸球性食道炎」ですが、疾患概念として確立してから未だ日は浅く、以前は小児患者が多いと言われていましたが成人での報告例が近年急増している注目の食道疾患です。症状は胸焼けや嘔吐などGERDと共通する部分が多く、見逃されている例が多いと考えられています。進行すると食道の線維化に伴い、嚥下障害や栄養障害を発症し観血的な処置が必要となる可能性があるため、早期発見と早期治療が重要です。近年指定難病になりました(難病情報センターのリンク)。

詳細は割愛しますが持続的な食物アレルゲンの暴露が発症の原因と考えられており、治療としてはPPIやプロスタグランジンD2阻害薬、ステロイドの投与などが実施されます。また Six-Food-Elimination-Diet (SFED)と呼ばれる牛乳、卵、魚介類、大豆、小麦、ナッツ類を除いた食事が治療として有効という報告があります(NEJMの記事はこちら)。

さて今回の「Crepe Paper-Like Appearance」ですが食道粘膜の浮腫、白斑に加えて長軸方向の縦走溝を伴う本症に特徴的な内視鏡所見です。

内視鏡検査を実施する際には「胸焼け≠GERD」であり、本症も鑑別の一つとして忘れないようにしましょう。

掲載雑誌は"Green Journal"という別称を持つ内科系雑誌「American Journal of Medicine(IF 5.55)」です。AJMには前回のDESに引き続き食道疾患が2本連続でAcceptされています。

100本まで残り76です。
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