英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。
New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
Posted by Hiroki Matsuura - 2024.07.19,Fri
Clinical PictureがAcceptされました(83本目)
今回は緊急性の高い循環器疾患に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Monitor-related changes consistent with paradoxical pulse」です。掲載誌は米国で2番目に古い歴史を誇る内科系雑誌「American Journal of the Medical Sciences(IF 2.3)」になります。今回の症例はショック状態で当院に搬送された方で、当初ショックの原因が判然としませんでしたがモニターの特徴的な波形から心タンポナーデの診断に至ったものです。さてタイトルにある奇脈(Paradoxical pulse)は心タンポナーデの際に認められる代表的な身体所見になります。国家試験では「奇脈≒心タンポナーデ」くらいの勢いで認識されていますが、奇脈は緊張性気胸、上大静脈症候群、気管支喘息、COPDの急性増悪などでも起こりえます。この奇脈ですが名称の認知度自体は高いものの機序や定義、正確な測定方法について詳細に説明できる方は意外といません。
奇脈の定義は「正常呼吸の吸気時における収縮期血圧が10 mmHg以上低下すること」になります。一般的に正常でも吸気時に収縮期血圧は低下しますが、その変動が背景疾患によって大きくなっているのです。また奇脈の測定方法は意外と煩雑であり「水銀血圧計を用いた触診法」を繰り返すことで判断します。このように奇脈は知名度が高いものの対象疾患(特に心タンポナーデ)が珍しいことや測定方法の煩雑さなどと併せて実用的な身体所見…とは言えない現状がありました。
今回AcceptされたClinical Pictureを投稿したきっかけは「パルスオキシメーターの波形を丁寧に観察すれば奇脈がわかるのではないか」と考えついたからです。近年パルスオキシメーターの発展は著しく、脈波を非常に正確に反映できるようになりました。吸気時の収縮期血圧の変動がパルスオキシメーターの数値変動に連動する様子が一目でわかります。このClinical Pictureの画期的なポイントは、これまで主観的な身体診察でしかなかった奇脈を、動的な波形に注目することで客観的に理解が可能な形に落とし込んだことにあります。使えるシチュエーションは限られますが、モニターの数値だけではなく、波形の動的な変化にも着目していただくきっかけになればと思います。
100本まで残り17本です。
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