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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by Hiroki Matsuura - 2023.10.01,Sun
Clinical PictureがAcceptされました(80本目)
菌血症と大腸癌に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Underestimated Red Flag for Colon Cancer: Bacteremia of Streptococcus sanguinis」です。掲載誌は米国で2番目に古い歴史を誇る内科系雑誌「American Journal of the Medical Sciences(IF 3.462)」になります。

今回の症例は発熱で当院を受診された高齢女性がStreptococcus sanguinusS.sanguinus)による菌血症と診断され、感染性心内膜炎を念頭に精査が行われましたが結果的に大腸癌が見付かったものになります。

さて菌血症の起炎菌のうち、悪性腫瘍と関連していると報告されているものはStreptococcus gallolyticus(以前はS.bovis)、Clostridium septicumが代表的です。他にもLactobacillus属(QJMに掲載された私のCaseはこちら)による菌血症でも悪性腫瘍の検索が必要だと考えられています。今回取り上げたS.sanguinusは口腔内に存在し、歯垢(プラーク)形成に関わる細菌として知られていますが、本菌の菌血症を契機に悪性腫瘍が発見された症例報告は殆どありません。

診療を振り返ってみて「口腔内のStreptococcus属菌菌血症→感染性心内膜炎」と短絡的に考えましたが、結果的に大腸癌がDetectされた訳で「S.sanguinusと悪性腫瘍に関連は本当にないのだろうか?」というClinical Questionが頭に浮かびました。疑問を解消するためにPubmedをあさっていたところ「癌患者が起こす菌血症の起炎菌で最も多いのはS.sanguinus(出典:Awada A, et al. Streptococcal and enterococcal bacteremia in patients with cancer. Clin Infect Dis. 1992; 15(1): 33-48)」という過去の報告を見付けたため提言型Clinical Picture(仮)と銘打って今回の症例を投稿することに決めました。要するに私が主張したかったのは「悪性腫瘍患者の菌血症の起炎菌としてS.sanguinusは最も頻度が高いのに、S.sanguinusが生えた時に悪性腫瘍を探さないのはおかしいのではないのか?」ということです。

実際にClinical Pictureの持つ形式の「自由さ」をフルに活かすことが出来たと思っています。最終的にはReviewerに建設的な意見をもらいながら3度のRevisonを経ること300日(AJMSの査読期間はそもそも長いですが今回はこれまでで最長です)、何とかClinical Pictureとして世に出すことがかないました。

このAJMSのClinical Pictureを読んだDrがS.sanguinusの菌血症を診て悪性腫瘍をDetectするきっかけになれば嬉しいです。と同時に本症例が今後の類似症例の集積が為されるための嚆矢となり、よりエビデンスレベルの高い研究の礎になればと夢想しています。

100本まで残り20本です。
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