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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by Hiroki Matsuura - 2023.08.29,Tue
Clinical PictureがAcceptされました(78本目)
今回は誤嚥性肺炎と整形外科疾患に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「An unusual cause of recurrent aspiration pneumonia」です。掲載誌は英国の救急医による専門協会「The Royal College of Emergency Medicine」の機関誌「Emergency Medicine Journal(IF 3.814)」になります。

今回Acceptされた症例は増悪する嚥下困難と繰り返す誤嚥性肺炎を主訴に来院された高齢男性のケースです。誤嚥性肺炎というと高齢者には避けがたい問題であり、ERで高齢者を診療していると「高齢者の肺炎≒誤嚥性肺炎」のような「思考停止」症例にしばしば遭遇します。そのため誤嚥性肺炎の背景に隠れている様々な疾患が見落とされていることが往々にしてあります。誤嚥の原因としては加齢神経疾患による嚥下機能低下が多くを占めますが、ときに身体の構造的な問題から誤嚥性肺炎を繰り返す方がいるので注意が必要です。

誤嚥性肺炎の方はしばしば誤嚥している自覚がない場合が多いのですが、今回の患者さんは年齢の割には認知機能は比較的保たれており、医師に対して明確に「のどに物が詰まる」「飲み込みづらい」と訴えてきました。

以前撮影されたCTでは脊椎の広い範囲で骨増殖架橋が認められ「びまん性骨増殖症(Diffuse Idiopathic Skeletal Hyperostosis: DISH)」と考えられました。しかし頚椎より上については画像がなかったことからCTやレントゲンを撮影したところ、喉頭蓋とほぼ同じ高さで骨棘が喉頭や食道を圧排していました。また骨化により頚椎の可動性が低下しており誤嚥を来たしやすい状況に陥っていたのです。嚥下機能検査をしたところ、やはり喉頭蓋の動きが著しく制限されておりDISHによる骨棘が誤嚥の主要因と考えられました。

DISHは近年報告数が増えており、2型糖尿病などとの関連が示唆されていますが未だに原因は不明です。ちなみに同様に靭帯部の骨化を来たす後縦靭帯骨化症や黄色靭帯骨化症に比べると、DISHは単独で神経障害を来たすことは稀です。しかし本症例のように骨化や骨増殖の位置が悪いと、患者のQOLを大きく下げることに繋がります。DISH全体からすると嚥下困難を来たす症例は全体の1%程度であり、決して多くはありませんが嚥下困難の鑑別疾患として重要でしょう。

今回の症例で最も強調したいのは「高齢者の肺炎≒誤嚥性肺炎」のような「思考停止」は危険であるということです。誤嚥性肺炎を繰り返す方で、疑わしい病歴(今回の場合であればDISHを示唆する画像所見)が併存する場合には注意をしましょう。

100本まで残り22本です。
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