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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by Hiroki Matsuura - 2023.08.02,Wed
Clinical PictureがAcceptされました(76本目)
連日のAcceptになります。今回は原因不明の大量腹水貯留に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Urinary Ascites: The great mimic」です。掲載誌はAsian Pacific Association of Gastroenterology (APAGE)の機関誌「Journal of Gastroenterology and Hepatology(IF 4.369)」です。本誌は初めてのAcceptになりました。

今回の症例は重度の統合失調症でほとんど疎通の取れない方が突然の発熱腹部膨満のため当院に搬送されたケースになります。患者はこれまで腎機能障害を指摘されたことはなく、統合失調症以外に目立った既往歴はありませんでした。直近の血液検査ではCrが4台まで急激に上昇しており、ER受診時には発熱と併せて敗血症による臓器障害を疑われていました。しかしCTでは腹腔内をすべて満たす大量の腹水が存在していましたが原因は指摘しえず、さらに敗血症を起こしている割には全身状態は良好でCr以外大きな血液検査異常もなかったため、患者は違和感に溢れた病歴を呈していました。そのため本症例のCr上昇は腎機能に起因するものではなく、腹水に起因するもの(膀胱が何らかの原因で破裂し腹腔内に漏れ出た尿が腹膜で再吸収された結果、血清Crが上昇した)ではないかと考えました。その目でCTを見返すと膀胱の上部に腹腔内と交通を認める部位があり、予想通り膀胱破裂に伴う腹水尿と確定診断しました。その後緊急手術で膀胱壁の修復が行われたことにより、患者は無事回復に向かいました(文章では理解しづらいのですが、Clinical Pictureでは一目で理解可能です。後日画像をこちらにも紹介します)。

膀胱破裂は様々な原因で起きえます。その中でも外傷出産医療行為に伴うものが多いとされています。例えば医原性のものでは術中の損傷だけでなく、放射線照射後に膀胱壁の菲薄化が生じピンホールの瘻孔から尿が腹腔内に繰り返し漏れ出てきていたため原因の特定に非常に難渋したという症例報告があります。

それを踏まえて今回のClinical Pictureでは「大量腹水の原因として膀胱破裂に伴う腹水尿を鑑別に挙げなければならない」ということを強調しています。膀胱破裂はたしかに泌尿器科の疾患になりますが、腹水貯留の患者を日常診療で多数目にする消化器内科のDrにこそ知ってほしいという意味合いで、このClinical Pictureは消化器内科系の雑誌に投稿しました。繰り返しになりますが皆さんも原因不明の大量腹水を診たときには「膀胱破裂」を鑑別の一つとして忘れないようにしましょう。

100本まで残り24本です。
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