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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by Hiroki Matsuura - 2023.07.19,Wed
Clinical PictureがAcceptされました(74本目)
さて今回はClinical Pictureを愛する皆様が一度は通る道(?)である「胃アニサキス症」のClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Unusual cause of acute severe epigastric pain in a Japanese woman」です。掲載誌は欧州内科学会が発行する内科系雑誌で、近年IFが急上昇し注目度の高まる「European Journal of Internal Medicine(IF 8.0)」です。

今回Acceptされた症例は突然の腹痛で来院された女性が腹部CTを契機に胃アニサキス症と診断されたものになります。来院時の問診では生食歴についてしっかりとした確認が行われておらず、腹部CTで胃壁が全周性に浮腫を呈している特徴的な画像所見が得られたことがきっかけとなり、緊急で上部消化管内視鏡検査が行われ確定診断に至りました。

胃アニサキス症に付着するアニサキスは線虫の一種であり、本邦における食中毒の原因の首位を独走しています。サバやイカに寄生し、処理の不十分なそれらの魚介類を摂取することで感染します。アニサキス症は地域の食文化を原因・背景としている場合が殆どであり、伝統的に魚の生食(刺身、寿司など)を行う日本は当然リスクの高い国に分類されます。寿司のグローバル化に従って世界中で症例が増加しており、イタリアやスペイン、ドイツ、フランスでも報告があります。

胃アニサキス症は渕崎 宇一郎 先生(恵寿総合病院)のNEJM誌史上に残る伝説的なClinical Picture(リンク)を筆頭に数多くの有名誌に掲載されている本邦を代表する寄生虫疾患です。大腸アニサキス症や偽性腸閉塞など臨床医を悩ます症例もあるため、Clinical Pictureにうってつけの題材でもあります。今回の症例の注目すべき点は「腹部CTで全周性の胃壁浮腫」を診た際にどのような鑑別疾患が挙がるか、だと思います。胃蜂窩織炎などの鑑別を挙げつつ、全身状態や背景疾患によって鑑別を絞っていくお手本のようなケースでもあります。また胃アニサキス症の少ない欧米では臨床医がアニサキス症を想起できず、同様の所見を呈する患者でも「胃アニサキス症」は鑑別に挙がらないかもしれません。基本的に予後は良好な疾患ですが、寿司のグローバル化に伴いおそらく症例は確実に増加していることでしょう。地球の裏側で「Sushi」に苦しめられる患者さんを減らすためにも有用なCT所見だと思い、Clinical Pictureとして投稿しました。ちなみに胃アニサキス症は正露丸が効果的です。

100本まで残り26本です。
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