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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by Hiroki Matsuura - 2024.02.21,Wed
撮っておきClinical Picture!(Cadetto.jp)更新のお知らせ(37)
日経メディカル姉妹誌で若手医師と医学生のためのサイト「Cadetto.jp」にて、2019年1月より連載中の「撮っておきClinical Picture!」ですが、2024年2月20日付で新しい記事が掲載されました。最近は更新が滞っており、いつの間にか連載5周年が過ぎてしまいました。これからも細々と続けてまいりますので、今後ともよろしくお願い致します。

さて今回のタイトルは「“指輪”に込められたのは愛ではなく……」です。私はアイルランド民謡がとても好きなのですが、個人的に特に好きな一曲を紹介しています。Clinical Pictureとともにお楽しみいただけたらと思います。

以下、記事のリンクです。
撮っておきClinical Picture!
“指輪”に込められたのは愛ではなく……
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Posted by Hiroki Matsuura - 2023.12.14,Thu
Clinical PictureがAcceptされました(82本目)
今回は食道裂孔ヘルニアに関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Unusual cause of recurrent bradycardia and syncopal symptoms」です。掲載誌はAsian Pacific Association of Gastroenterology (APAGE)の機関誌「Journal of Gastroenterology and Hepatology(IF 4.369)」になります。

今回の症例は、長期間にわたって食思不振があり、高齢者うつとして医療保護入院となっていた患者のケースで非常に教訓的です。患者は高齢者うつを背景にした「拒食」を理由に近医精神科に入院されていましたが食事の度に失神を繰り返すため「高齢に伴う神経調節性失神」として経過観察されていました。しかし搬送当日は普段と異なり状態が改善せず低血圧が遷延していたことから当院に紹介のうえ搬送となったのです。搬送後には状態は改善していたのですが「神経調節性失神」として片付けるにはあまりに腑に落ちないため詳細に問診を進めました。すると患者は「ご飯が食べたい。おなかがすいた。」と言うのです。「拒食」という状況では全くありませんでした。食事を再開すると、やはり血圧が下がり気分不良や眼前暗黒感を訴えるのですが、そもそも患者はこの気分不良に恐怖感を感じて食事を食べたがらなかったのでした。

器質的な異常があるのでは、と考えて画像を見返すと胸部Xpでは巨大な食道裂孔ヘルニアが映り込んでいました。さらにCTでは心臓が食道裂孔ヘルニアによって圧排されており、矢状断で確認すると下大静脈が殆どうつっていません(掲載後に画像を追加します)。失神の原因は巨大な食道裂孔ヘルニアの存在に伴い、食事によって消化管内部の圧力が増加することで下大静脈及び心臓が圧排されて物理的に血流の遮断が起きたから、と考えられました。すぐに外科紹介し食道裂孔ヘルニアの修復術を実施したところ、術後患者は徐脈や失神症状を起こすことが全くなくなり状態が劇的に改善したのです。食事も食べられるようになり自宅に無事帰ることができました。


そもそも食道裂孔ヘルニアは腹腔内に収まっているはずの胃の一部が横隔膜から胸腔側に出てきてしまう状態を指します。食道裂孔ヘルニアは非常に一般的な消化管疾患であり、GERDなどを起こさなければ大きな問題になることは殆どありません。噴門部や胃の一部が胸腔側に出ている型を「混合型」と呼ぶのですが、この類型ではおよそ50%が逆流性食道炎を伴います。さらに重症例では今回のケースのように心臓などを圧排して非常に重篤な合併症を生じることがあります。

(出典:Ann Agric Environ Med. 2021;28(1):20-26)

食道裂孔ヘルニアを診たときに我々は「高齢だから仕方がない」「肥満だから仕方がない」と一瞥すらしないことが多々あるでしょう。私にも思い当たる節があります。しかし、ときにそんな思い込みが牙を剥いて我々に襲い掛かってくることがあるのです。

言うまでもないことですが「精神科疾患」と判断された患者の中に器質的な異常が見逃されているケースは数多く存在します。今回の症例は非常に幸運な経過をたどりましたが「精神科疾患」と思い込んで思考を放棄したくなるときこそ「立ち止まる勇気」を持ちたいですね。

なお本症例は2023年2月18-19日に栃木県で開催された第26回日本病院総合診療医学会で発表した症例になります。少々時間はかかってしまいましたが、学会発表したものが無事にAcceptされたのでひとまず安心しました。

100本まで残り18本です。
Posted by Hiroki Matsuura - 2023.11.04,Sat
Clinical PictureがAcceptされました(81本目)
今回は悪性腫瘍と身体所見に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「An elderly man with chronic poor appetite」です。掲載誌は掲載誌は英国の救急医による専門協会「The Royal College of Emergency Medicine」の機関誌「Emergency Medicine JournalIF 3.814)」になります。

今回Acceptされたのは長期間にわたる食思不振のため当院の救急外来を受診された高齢男性の臍部に認められたSister Mary Joseph's nodule(シスターメアリージョセフの結節)のClinical Pictureです。Sister Mary Joseph’s noduleはアメリカのミネソタ州ロチェスターのセントメアリー病院(現在のMayo Clinic)でWilliam Mayoの助手として勤務していた主任看護師 Sister Mary Josephが臍部転移を来した胃癌の予後が悪いことに気付き、その業績を讃えたHamilton Baileyによって1949年以後に名付けられました。一般的に腹膜からの直接的な播種が90%以上を占めるとされており、その多くを胃癌卵巣癌が占めます。よってSister Mary Joseph’s noduleは原発巣の発見に繋がりうる非常に重要な皮膚・腹部所見と言えるでしょう。

本症例の男性患者はこれまで殆ど医療機関の受診のない方で、診察に当たっていた初期研修医と身体所見を取っている中でSister Mary Joseph's noduleを見付けました。画像検査に行く前にSister Mary Joseph’s noduleの可能性が高いことを彼に伝えましたが、あまりピンと来ていないようでした。彼は半信半疑で患者をCTに連れていき、暫くして非常に驚いた顔をして戻ってきたのがとても印象的でしたね。

100本まで残り19本です。
Posted by Hiroki Matsuura - 2023.10.01,Sun
Clinical PictureがAcceptされました(80本目)
菌血症と大腸癌に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Underestimated Red Flag for Colon Cancer: Bacteremia of Streptococcus sanguinis」です。掲載誌は米国で2番目に古い歴史を誇る内科系雑誌「American Journal of the Medical Sciences(IF 3.462)」になります。

今回の症例は発熱で当院を受診された高齢女性がStreptococcus sanguinusS.sanguinus)による菌血症と診断され、感染性心内膜炎を念頭に精査が行われましたが結果的に大腸癌が見付かったものになります。

さて菌血症の起炎菌のうち、悪性腫瘍と関連していると報告されているものはStreptococcus gallolyticus(以前はS.bovis)、Clostridium septicumが代表的です。他にもLactobacillus属(QJMに掲載された私のCaseはこちら)による菌血症でも悪性腫瘍の検索が必要だと考えられています。今回取り上げたS.sanguinusは口腔内に存在し、歯垢(プラーク)形成に関わる細菌として知られていますが、本菌の菌血症を契機に悪性腫瘍が発見された症例報告は殆どありません。

診療を振り返ってみて「口腔内のStreptococcus属菌菌血症→感染性心内膜炎」と短絡的に考えましたが、結果的に大腸癌がDetectされた訳で「S.sanguinusと悪性腫瘍に関連は本当にないのだろうか?」というClinical Questionが頭に浮かびました。疑問を解消するためにPubmedをあさっていたところ「癌患者が起こす菌血症の起炎菌で最も多いのはS.sanguinus(出典:Awada A, et al. Streptococcal and enterococcal bacteremia in patients with cancer. Clin Infect Dis. 1992; 15(1): 33-48)」という過去の報告を見付けたため提言型Clinical Picture(仮)と銘打って今回の症例を投稿することに決めました。要するに私が主張したかったのは「悪性腫瘍患者の菌血症の起炎菌としてS.sanguinusは最も頻度が高いのに、S.sanguinusが生えた時に悪性腫瘍を探さないのはおかしいのではないのか?」ということです。

実際にClinical Pictureの持つ形式の「自由さ」をフルに活かすことが出来たと思っています。最終的にはReviewerに建設的な意見をもらいながら3度のRevisonを経ること300日(AJMSの査読期間はそもそも長いですが今回はこれまでで最長です)、何とかClinical Pictureとして世に出すことがかないました。

このAJMSのClinical Pictureを読んだDrがS.sanguinusの菌血症を診て悪性腫瘍をDetectするきっかけになれば嬉しいです。と同時に本症例が今後の類似症例の集積が為されるための嚆矢となり、よりエビデンスレベルの高い研究の礎になればと夢想しています。

100本まで残り20本です。
Posted by Hiroki Matsuura - 2023.09.15,Fri
撮っておきClinical Picture!(Cadetto.jp)更新のお知らせ(36)
日経メディカル姉妹誌で若手医師と医学生のためのサイト「Cadetto.jp」にて、2019年1月より連載中の「撮っておきClinical Picture!」ですが、2023年9月15日付で新しい記事が掲載されました。

今回のタイトルは「採尿バッグが紫色に! 原因は……?」です。ご存知の方には当たり前の内容になりますが、最近立て続けに「血尿」という触れ込みで「紫尿バッグ症候群」の紹介が相次いだので啓発目的に紹介しました。是非ともご参照ください。

以下、記事のリンクです。
撮っておきClinical Picture!
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