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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by - 2025.04.26,Sat
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Posted by Hiroki Matsuura - 2020.08.21,Fri
Clinical PictureがAcceptされました(60本目)
今回は珍しい胆道系疾患に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Porcelain Gallbladder」です。掲載誌は米国消化器病学会が発行するJournalでGastroenterologyの姉妹誌である「Clinical Gastroenterology and Hepatology (IF 8.549)」です(なお本症例より2020年度のIFに変更)。本誌は今回が初めてのacceptになります。

さて「Porcelain Gallbladder」は直訳すると「陶器様胆嚢」となります。陶器様胆嚢は比較的稀な病態で、慢性胆嚢炎の一種として知られています。全周性に石灰化を来たしており、音響陰影のため超音波検査では内腔が描出されません。

陶器様胆嚢は以前から「発癌と関係があるか否か」が議論されている疾患です。画像診断技術の発達していなかった1950年代には20%程度の症例が胆嚢癌と関連するされ、当時は確定診断がつき次第、積極的な外科的切除が勧められました。しかしその後の研究で、以前よりも癌化の確率が低いと考えられるようになっています。

なお全周性の陶器様胆嚢は内腔の粘膜が石灰化しているため発癌に至らないのではないかという仮説が一部の研究者の間で唱えられていますが真相は果たして…。

陶器様胆嚢は前述した通り比較的稀な疾患であり、他疾患の精査中に偶然画像検査で指摘される場合があります。基本的に経過観察でかまいませんが、ごく一部の症例では癌化する可能性が否定できないため、少しだけ注意しましょう。

100本まで残り40本です。
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Posted by Hiroki Matsuura - 2020.07.21,Tue
Clinical PictureがAcceptされました(59本目)
約4か月ぶりのAcceptになりました。コロナ禍のせいにはしたくないですが、Clinical Picture投稿はかなり滞っています。しかし「With コロナ」の時代は対面式の診察方法が制限され、より直感的な診断力を磨く必要があると感じています。雌伏のときこそClinical Pictureで大いに学びましょう。さて前置きが長くなりましたが、今回は内分泌疾患に関わるClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Milphosis: Hypothyroidism」です。

掲載誌は世界的に著明な米国の医療機関、Cleveland Clinicが発行する内科系雑誌「Cleveland Clinic Journal of Medicine(IF 1.855)」です。

甲状腺機能低下症では様々な身体所見があらわれることが知られていますが、代表的なものに非圧痕性浮腫、徐脈、嗄声などが挙げられます。そして脱毛も頻度が高く認められる所見の一つです。よく知られた脱毛所見として「眉毛の外側3分の1が抜ける所見」「Hertoghe徴候」と呼ばれ、甲状腺機能低下症アトピー性皮膚炎で特徴的です。

今回取り上げたClinical Pictureは眉毛ではなく、睫毛の脱落です。「睫毛のみの脱落」「Milphosis」と呼ばれ、甲状腺機能低下症帯状疱疹、ハンセン病、尋常性乾癬、皮膚悪性腫瘍、薬剤性(ヘパリン、ACEi)などで観察される場合があります。ちなみに「眉毛と睫毛がともに脱落した状態」「Madarosis」と呼ばれ区別されます。

甲状腺機能低下症では毛髪の休止期脱落が高頻度に生じるため脱毛に繋がります。なお毛根の休止期が早期に終了することで毛髪が細く脆弱になった結果、休止期脱落が生じるとされています。

下腿浮腫と倦怠感を主訴に初診外来に来院された本症例ですが、顔を観察した際に「Milphosis」に気付いたことで比較的早期に甲状腺機能低下症という診断に至りました。

特に女性では睫毛や眉毛は化粧で修飾され、元の状態とは程遠い場合が多々あります。甲状腺機能低下症を疑う病歴のある患者さんが来られた際には、一度眉毛や睫毛の状態を確認してみましょう。

100本まで残り41本です
Posted by Hiroki Matsuura - 2020.02.11,Tue
Clinical PictureがAcceptされました(58本目)
今回は繰り返す腹痛と臍部感染を生じる先天疾患に関連したClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Chronic abdominal pain with pus discharge from the umbilicus」です。

掲載誌は米国消化器病学会が発行するJournalで、消化器内科領域を扱う雑誌で最も高いImpact Factorを誇る「Gastroenterology(IF 19.233)」です。
 
今回取り上げたのは間歇的な腹痛と臍部からの排膿を主訴に当院へ来院された尿膜管遺残(Urachal remnant)の症例です。そもそも尿膜管とは胎児期に臍と膀胱とを結んでおり、胎児の尿を母体に流すための通り道となっています。通常出生とともに尿膜管は閉鎖し、成長に伴って消退していくのですが、本症ではその名の通り尿膜管が残存し細菌感染を起こすことで、本症例のような腹痛や臍部の発赤、排膿を生じます。

遺残した尿膜管は上記のように感染を繰り返すことにくわえ、非常に稀ながら悪性腫瘍の発生母地となりえます。そのため本症は外科的に尿膜管の切除が行われます。特に近年では腹腔鏡を用いた摘除術が広く実施されており、従来に比べてより低侵襲で治療が可能です。

尿膜管遺残の分類は成書に譲りますが、本症の診断には造影CTやMRIなどが使用され、遺残物や膿瘍形成などを評価し治療を進めます。
臍部での繰り返す感染や膿汁排泄が認められる患者では尿膜管遺残を鑑別の1つに挙げましょう。

100本まで残り42本です
Posted by Hiroki Matsuura - 2020.01.31,Fri
 Clinical PictureがAcceptされました(57本目)
約3か月間にわたって全くAcceptがないまま時間が経過し、いつの間にか年が明けてしまいました。今年も細々と続けて参りますので何卒よろしくお願い致します。

さて今回は診断困難例が多い肺外結核症例に関するClinical Pictureがacceptされました。タイトルは「Starry sky in the abdomen」直訳すると「お腹の中の星空」で無駄にお洒落な感じになっています。掲載誌はLancetの関連誌として2016年に創刊されたばかりですが消化器領域では上位から6番目のIFを誇る「Lancet Gastroenterology and Hepatology (IF 12.856)」であり今回が初めての掲載となります。

今回の症例は若年のベトナム人女性が慢性の腹痛で受診され、結核性腹膜炎と診断されたケースです。
結核性腹膜炎は20-40歳代の比較的若年者に多く、わずかに女性が多いことが知られています。結核性腹膜炎は全結核患者の0.5%程度に認められる非常に稀な疾患ですが、確定診断が極めて難しい疾患としても知られています。

本症の診断を困難とする要因としては特異的な検査が存在しないことが挙げられます。一般的に結核性腹膜炎では腹水を採取し結核菌に対するPCRや培養検査を行いますが、感度が非常に低く特に後者では15-30%程度でしか陽性になりません。診断に関しては腹水中のADAを測定することが有用ですが、ADAの結果がはっきりしない場合や腹水を安全に穿刺できない場合には、腹腔鏡を用いた直視下での観察と生検が実施されます。本症例ではまさに腹水穿刺路が確保できず、臍部から腹腔鏡を挿入し、直視下での観察にくわえ腹膜と大網を切除し病理検査を行いました。その際に採取された腹水は滲出性かつADAは高値を示しましたが、培養や結核菌PCRはやはり陰性でした。しかし大網の切除標本から顕微鏡下にラングハンス巨細胞が確認されたことにくわえ、腹腔鏡下で粟粒状の結節が腹腔内に広く観察されたことから結核性腹膜炎と診断し、抗結核薬にて治療を実施しました。

本症の治療は通常の結核治療と同様であり、一般的にはREF+PZA+INH+EBの4剤併用を2か月、さらにREF+INHの2剤併用を4か月(計6か月)実施します。詳しくは成書を参照ください。
なお本症例では患者の帰国が間近に迫った状態での診断であったため、ベトナムでの受け入れ医療機関の選定や英語での紹介状の記載など問題が山積みでしたが、Socialな問題の解決を通して「疾患以外」でも多くのことを学ばせていただいた印象深い1例です。

肝硬変のない若年者の原因不明の腹水を診た際には結核性腹膜炎を鑑別の1つとして忘れないようにしましょう。

100本まで残り43本です
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.10.18,Fri
Clinical PictureがAcceptされました(56本目)
今回は急激な浸透圧変化によって生じる脱髄疾患についてのClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Mexican hat sign」です。掲載誌はまたまたまた卒後医学教育に先進的な変化をもたらした英国の非営利団体Fellowship of Postgraduate Medicine (FPM)が発行している100年の歴史と伝統を誇る教育誌「Postgraduate Medical Journal (IF 1.946)」です。

浸透圧脱髄症候群(橋中心性髄鞘崩壊)とは慢性的な低栄養状態やアルコール中毒、尿崩症や悪性腫瘍などに伴った長期的な低Na血症の急激な補正により脱髄を生じる疾患です。橋底部に病変を生じるのが典型例であり以前は橋中心性髄鞘崩壊(CPM:Central Pontine Myelinolisys )と呼ばれていましたが、橋以外に病変が生じる場合もあり、現在では浸透圧脱髄症候群(ODS:Osmotic Demyelination Syndrome)と呼ばれるようになっています。

上述した通り本症は低Na血症の補正速度が速すぎることが発症原因であり、Naの補正速度を10mEq/L/day以内に抑える必要があるとされていますが、8mEq/L/dayでも発症したという報告もあるようです。また慢性的な低Na血症だけでなく、高Na血症の補正でも本症を発症したという症例報告も散見されます

ODSの症状としては意識障害、嚥下障害、構音障害、傾眠、無動、無言、弛緩性四肢麻痺などが進行性に生じ、重度のものでは閉じ込め症候群に陥る場合もあるようです。

本症ではMRIにてDWIやT2強調像で橋底部中心に、まるでメキシコ人の被る帽子のような特徴的な高信号域(Mexican hat sign)を呈します。病歴や症状と併せて本症が疑わしい場合にはMRIが確定診断に有用です。ただし発症直後ではMRIの画像所見は偽陰性になるので注意が必要となります(3-4週間程度)。

治療に関してはControversyな点、施設間での違いも大きいため言及しませんが、本症についてはやはり予防が重要な疾患になります。低Na血症を診た際には「もしかして慢性的な低Na血症ではないか」と頭の片隅に置きながら、病歴を注意深くとり補正を開始することが大切でしょう。

100本まで残り44本です
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