英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。
New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
Posted by Hiroki Matsuura - 2021.10.09,Sat
Clinical Picture(Case report)が掲載されました(48)
先日アクセプトされました「Amiodarone-induced pneumonitis」がQuarterly Journal of Medicineの2021年6月号に掲載されています(もう10月略)。
Amiodaroneは難治性、致死性の不整脈に古くから使用されている抗不整脈薬です。難治性の心房細動や心室細動にくわえ、低心機能や肥大型心筋症に伴う心房細動が適応になります。特殊な作用機序を有しており、治療抵抗性の不整脈に対して「替えのきかない」重要な薬剤であるという反面、非常に多くの副反応を有します。代表的な副反応には本症例のようなアミオダロン肺障害、甲状腺機能異常、肝障害、角膜障害、色素沈着などが挙げられます。アミオダロンは製剤100mgのうち37mgもヨウ素が含まれており、非常に脂溶性の高い構造をしていることにくわえ半減期が長いことから、長期間の使用で臓器への蓄積が起こりやすいのです。
これらの副反応のうちとりわけ危険性が高く、ときに致死性の経過を辿るのが本剤による肺障害です。既報によると年齢が60歳以上、投与期間が半年以上の群で高リスクとされています。また総投与量も重要であり101gを超えると、肺障害のORは10倍に跳ね上がります。
本症例では新型コロナウイルス感染症流行の影響もあり、原因不明の肺炎として診断に至るまで長い時間を要しました。経過中にあらためて撮影されたCTを確認すると体型や生活習慣に不釣り合いなほどCT値の高い肝臓が目を引きました。これはアミオダロンの長期使用の影響でヨウ素が肝臓に沈着し、まるで造影剤のように肝臓の輝度を引き上げていたことが理由です。肝臓の輝度の高さからアミオダロンによる臓器障害を疑い、本剤を中止したところ肺障害は改善しました。
先日アクセプトされました「Amiodarone-induced pneumonitis」がQuarterly Journal of Medicineの2021年6月号に掲載されています(もう10月略)。
Amiodaroneは難治性、致死性の不整脈に古くから使用されている抗不整脈薬です。難治性の心房細動や心室細動にくわえ、低心機能や肥大型心筋症に伴う心房細動が適応になります。特殊な作用機序を有しており、治療抵抗性の不整脈に対して「替えのきかない」重要な薬剤であるという反面、非常に多くの副反応を有します。代表的な副反応には本症例のようなアミオダロン肺障害、甲状腺機能異常、肝障害、角膜障害、色素沈着などが挙げられます。アミオダロンは製剤100mgのうち37mgもヨウ素が含まれており、非常に脂溶性の高い構造をしていることにくわえ半減期が長いことから、長期間の使用で臓器への蓄積が起こりやすいのです。
これらの副反応のうちとりわけ危険性が高く、ときに致死性の経過を辿るのが本剤による肺障害です。既報によると年齢が60歳以上、投与期間が半年以上の群で高リスクとされています。また総投与量も重要であり101gを超えると、肺障害のORは10倍に跳ね上がります。
本症例では新型コロナウイルス感染症流行の影響もあり、原因不明の肺炎として診断に至るまで長い時間を要しました。経過中にあらためて撮影されたCTを確認すると体型や生活習慣に不釣り合いなほどCT値の高い肝臓が目を引きました。これはアミオダロンの長期使用の影響でヨウ素が肝臓に沈着し、まるで造影剤のように肝臓の輝度を引き上げていたことが理由です。肝臓の輝度の高さからアミオダロンによる臓器障害を疑い、本剤を中止したところ肺障害は改善しました。
以下Journal記事のリンクです。
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Posted by Hiroki Matsuura - 2021.09.22,Wed
撮っておきClinical Picture!(Cadetto.jp)更新のお知らせ(24)
日経メディカル姉妹誌で若手医師と医学生のためのサイト「Cadetto.jp」にて、2019年1月より連載中の「撮っておきClinical Picture!」ですが、2021年9月22日付で新しい記事が掲載されました。タイトルは「爪の変色から推測できるあの生活歴」です。
久々に「爪」を取り上げました。ぜひともご参照ください。
以下、記事のリンクです。
撮っておきClinical Picture!
「爪の変色から推測できるあの生活歴」
「爪の変色から推測できるあの生活歴」
Posted by Hiroki Matsuura - 2021.09.04,Sat
Clinical Pictureが掲載されました(47)
先日アクセプト「Leriche syndrome」がCleveland Clinic Journal of Medicine の2021年9月号に掲載されています。
Leriche症候群は終末大動脈に生じる中枢型の閉塞性動脈硬化症であり、動脈硬化を主な要因とし腹部大動脈下端から総腸骨動脈にかけて慢性の大動脈閉塞症を引き起こす疾患です。
本症の古典的な三徴は①間欠性跛行 ②下肢脈拍消失 ③勃起不全です。しかしながら本症では慢性的に発達した側副血行路により下肢や骨盤腔内臓器の血流が維持されており、派手な画像所見に比べると症状は軽微であったり無症候性であることも珍しくありません。そのため本症の診断には身体所見が診断の大きな手掛かりになりえます。間欠性跛行を示す疾患はほかにASOや腰部脊柱管狭窄症などが挙がりますが、Leriche症候群を鑑別疾患として忘れないようにしましょう。両下肢の動脈触知を丁寧に行い、脈拍だけではなく「左右差」を評価することも必要です。
また前述のように本症の原因は動脈硬化に起因するものが多数を占め、冠動脈疾患や腎機能障害を併う場合があることから併存疾患の検索が重要です。特に虚血性心疾患の合併が目立つことから、心機能や冠動脈の評価を行いましょう。
足趾の血流障害が強い、あるいは間欠性跛行の増悪が著しい症例に対しては外科的にバイパス術を行います。また内服療法としてはシロスタゾールやアスピリンなどの抗血小板薬が推奨されています。
先日アクセプト「Leriche syndrome」がCleveland Clinic Journal of Medicine の2021年9月号に掲載されています。
Leriche症候群は終末大動脈に生じる中枢型の閉塞性動脈硬化症であり、動脈硬化を主な要因とし腹部大動脈下端から総腸骨動脈にかけて慢性の大動脈閉塞症を引き起こす疾患です。
本症の古典的な三徴は①間欠性跛行 ②下肢脈拍消失 ③勃起不全です。しかしながら本症では慢性的に発達した側副血行路により下肢や骨盤腔内臓器の血流が維持されており、派手な画像所見に比べると症状は軽微であったり無症候性であることも珍しくありません。そのため本症の診断には身体所見が診断の大きな手掛かりになりえます。間欠性跛行を示す疾患はほかにASOや腰部脊柱管狭窄症などが挙がりますが、Leriche症候群を鑑別疾患として忘れないようにしましょう。両下肢の動脈触知を丁寧に行い、脈拍だけではなく「左右差」を評価することも必要です。
また前述のように本症の原因は動脈硬化に起因するものが多数を占め、冠動脈疾患や腎機能障害を併う場合があることから併存疾患の検索が重要です。特に虚血性心疾患の合併が目立つことから、心機能や冠動脈の評価を行いましょう。
足趾の血流障害が強い、あるいは間欠性跛行の増悪が著しい症例に対しては外科的にバイパス術を行います。また内服療法としてはシロスタゾールやアスピリンなどの抗血小板薬が推奨されています。
以下Journal記事のリンクです。
Posted by Hiroki Matsuura - 2021.08.01,Sun
Clinical Picture(Case report)が掲載されました(46)
先日アクセプトされました「Japanese spotted fever and rickettsial pneumonia」がQuarterly Journal of Medicineの2021年4月号に掲載されています(もう8月なんですけどね)。
「Japanese spotted fever(日本紅斑熱)」は1984年に発見された紅斑熱群リケッチア感染症です。近年感染者数が急激に増加しており公衆衛生上大きな脅威となるダニ媒介疾患として知られています(令和2年は過去最多の報告数でした)。一般的に紅斑熱群リケッチア感染症は紅斑、痂皮、肝障害を3徴としますが、血管内皮に感染し増殖するという特性から、全身のあらゆる臓器で臓器障害を引き起こします。症状の多くは非特異的であり、発熱や全身倦怠感、筋肉痛などのインフルエンザ様症状を呈するため、紅斑などを見落としたり(症例によっては紅斑が目立たない場合もあります)、流行地域で鑑別疾患から本症を落としてしまった場合には想起が難しく、重症化し致命的な経過をたどる危険性があります。
前述のように紅斑熱群リケッチア感染症は血管内皮に感染する特性から、全身のあらゆる臓器に感染を起こし臓器障害を来たしますが、肺も例外ではありません。日本紅斑熱の類縁疾患であるロッキー山紅斑熱(Rickettsia rickettsi)、地中海紅斑熱(Rickettsia conorii)、ツツガムシ病(Orientia tsutsugamushi)などでは呼吸器症状が出現することは決して稀ではなく、CTや胸部レントゲン写真が様々な英文誌に登場しており「リケッチア肺炎」として報告されています。
紅斑熱群リケッチア感染症は「知らないと想起できない」「早期発見が患者の生命予後を左右する」「患者毎に症状の多様性が大きい」、など様々な点で臨床医泣かせの疾患です。特に本症例のような一見「普通の肺炎」に見えてしまう症例は非常に稀ではありますが、落とし穴になる可能性が高いため、通常の抗菌薬治療に反応が乏しい症例や原因不明の血小板減少を伴う症例では紅斑熱群リケッチア感染症を鑑別疾患として考える必要があるでしょう。
先日アクセプトされました「Japanese spotted fever and rickettsial pneumonia」がQuarterly Journal of Medicineの2021年4月号に掲載されています(もう8月なんですけどね)。
「Japanese spotted fever(日本紅斑熱)」は1984年に発見された紅斑熱群リケッチア感染症です。近年感染者数が急激に増加しており公衆衛生上大きな脅威となるダニ媒介疾患として知られています(令和2年は過去最多の報告数でした)。一般的に紅斑熱群リケッチア感染症は紅斑、痂皮、肝障害を3徴としますが、血管内皮に感染し増殖するという特性から、全身のあらゆる臓器で臓器障害を引き起こします。症状の多くは非特異的であり、発熱や全身倦怠感、筋肉痛などのインフルエンザ様症状を呈するため、紅斑などを見落としたり(症例によっては紅斑が目立たない場合もあります)、流行地域で鑑別疾患から本症を落としてしまった場合には想起が難しく、重症化し致命的な経過をたどる危険性があります。
前述のように紅斑熱群リケッチア感染症は血管内皮に感染する特性から、全身のあらゆる臓器に感染を起こし臓器障害を来たしますが、肺も例外ではありません。日本紅斑熱の類縁疾患であるロッキー山紅斑熱(Rickettsia rickettsi)、地中海紅斑熱(Rickettsia conorii)、ツツガムシ病(Orientia tsutsugamushi)などでは呼吸器症状が出現することは決して稀ではなく、CTや胸部レントゲン写真が様々な英文誌に登場しており「リケッチア肺炎」として報告されています。
紅斑熱群リケッチア感染症は「知らないと想起できない」「早期発見が患者の生命予後を左右する」「患者毎に症状の多様性が大きい」、など様々な点で臨床医泣かせの疾患です。特に本症例のような一見「普通の肺炎」に見えてしまう症例は非常に稀ではありますが、落とし穴になる可能性が高いため、通常の抗菌薬治療に反応が乏しい症例や原因不明の血小板減少を伴う症例では紅斑熱群リケッチア感染症を鑑別疾患として考える必要があるでしょう。
以下Journal記事のリンクです。
Quarterly Journal of Medicine
「Japanese spotted fever and rickettsial pneumonia」
「Japanese spotted fever and rickettsial pneumonia」
Posted by Hiroki Matsuura - 2021.07.03,Sat
撮っておきClinical Picture!(Cadetto.jp)更新のお知らせ(23)
日経メディカル姉妹誌で若手医師と医学生のためのサイト「Cadetto.jp」にて、2019年1月より連載中の「撮っておきClinical Picture!」ですが、2021年7月2日付で新しい記事が掲載されました。タイトルは「『赤い耳』から鑑別できるあの疾患」です。
耳が赤い、という主訴から皆さんはどんな疾患を思い浮かべますか?
以下、記事のリンクです。
撮っておきClinical Picture!
「『赤い耳』から鑑別できるあの疾患」
「『赤い耳』から鑑別できるあの疾患」
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