忍者ブログ
英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11
Posted by Hiroki Matsuura - 2021.12.17,Fri
Clinical Pictureが掲載されました(51)
先日アクセプトされました「Hemolytic crisis of Hereditary Spherocytosis」がPMJの2022年1月号に掲載されています。

遺伝性球状赤血球症(Hereditary spherocytosis)は本邦において最も頻度の高い遺伝性溶血性貧血であり、多くの症例で常染色体優性遺伝形式を呈します。これは赤血球の膜表面に存在する膜蛋白に異常が生じるもので、赤血球の変形能の低下により溶血が起こりやすくなるのが原因となります。そして感染などをきっかけに溶血発作が進む場合があり、特にパルボウイルスB19感染による伝染性紅斑では無形成発作を引き起こし、本症例のように重篤化することも珍しくありません。

一般的に遺伝性球状赤血球症は血に伴う黄疸、胆嚢結石、慢性貧血などを伴うことが多く、精査中に偶然発見されることもあるようです。貧血が重篤な場合には脾摘術が考慮されますが、脾摘後は莢膜を有する細菌感染症への抵抗力が著しく低下することから、肺炎球菌や髄膜炎菌などに対するワクチン接種を忘れないようにしましょう。

※残念ながらPMJはClinical Pictureのコーナーを廃止してしまいました。いつか復活することを期待してしばしお別れです。

以下Journal記事のリンクです。

Postgraduate Medical Journal
PR
Posted by Hiroki Matsuura - 2021.12.03,Fri
Clinical Pictureが掲載されました(50)
先日アクセプトされました「Metronidazole-induced encephalopathy: Symmetrical hyperintensity on imaging」がCCJMの2021年12月号に掲載されています。

メトロニダゾールは主に嫌気性菌に対する抗菌薬として世界中で広く使用されています。嫌気性菌以外にもジアルジア症、トリコモナス症、アメーバ赤痢など様々な感染症に対して有効です。日常臨床では偽膜性腸炎(CD腸炎)や、Helicobacter Pyloriの除菌療法で使用することが多いのではないでしょうか。

メトロニダゾールを使用するうえで注意すべき副作用が三点あります。それは「薬剤相互作用」「ジスルフィラム様作用」そして「脳症」です。

メトロニダゾールを高用量でかつ長期間使用すると「脳症」を引き起こします。本症の発症機序は十分に解明されていませんが仮説として「メトロニダゾールがニューロンのRNAと選択的に結合しすることで、タンパク合成を抑制し軸索変性を生じる」あるいは「メトロニダゾールによってGABA変性やフリーラジカル発生が惹起され神経組織の損傷に至る」ことが原因と考えられています。今回の症例はCD腸炎に対してメトロニダゾールで治療を繰り返されていた高齢者が突然の意識障害と食思不振を呈したため、MRI検査を実施され本症と診断されたものになります。

メトロニダゾール脳症の症状は非特異的であり嘔気や嘔吐、回転性めまい、歩行障害、構音障害、傾眠、昏睡など多彩な神経症状を示します。画像検査では特にMRI(T2やFLAIR)で、小脳歯状核、中脳蓋部、脳梁膨大部に特徴的な左右対称の高吸収域が認められるため診断の一助となります。今回はこの典型的なMRI画像がAcceptされました。よってメトロニダゾールを使用している患者で非特異的な症状や神経症状が出現した場合には本症を鑑別の1つとして想起しMRI撮影を考慮しましょう。

本症の治療は薬剤の中止であり、基本的に予後は良好で薬剤中止後4-7日程度で回復するとされていますが、ときに不可逆的、致死的な症例も報告されるため注意が必要です。

以下Journal記事のリンクです。
Cleveland Clinic Journal of Medicine
Posted by Hiroki Matsuura - 2021.12.01,Wed
Clinical Pictureが掲載されました(49)
先日アクセプトされた(2020年の8月ですが…)「Porcelain Gallbladder」がCGHの2021年12月号に掲載されています。

Porcelain Gallbladder」は直訳すると「陶器様胆嚢」となります。陶器様胆嚢は比較的稀な病態で、慢性胆嚢炎の一種として知られています。全周性に石灰化を来たしており、音響陰影のため超音波検査では内腔が描出されません。

陶器様胆嚢は以前から「発癌と関係があるか否か」が議論されている疾患です。画像診断技術の発達していなかった1950年代には20%程度の症例が胆嚢癌と関連するとされ、当時は確定診断がつき次第、積極的な外科的切除が勧められました。しかしその後の研究で、以前よりも癌化の確率が低いと考えられるようになっています(なお全周性の陶器様胆嚢は内腔の粘膜が石灰化しているため発癌に至らないのではないかという仮説が一部の研究者の間で唱えられていますが真相は果たして…。)

陶器様胆嚢は前述した通り比較的稀な疾患であり、他疾患の精査中に偶然画像検査で指摘される場合があります。基本的に経過観察でかまいませんが、ごく一部の症例では癌化する可能性が否定できないため、少しだけ注意しましょう。

以下Journal記事のリンクです。
Clinical Gastroenterology and Hepatology
Images of the Month
Porcelain Gallbladder
Posted by Hiroki Matsuura - 2021.11.30,Tue
「診断エラー学のすすめ」に掲載されました(1)
今回はCadettoでの連載ではなく日経メディカル本誌に掲載された記事を紹介します。
タイトルは「通常とは異なるプレゼンテーションを呈した症例『少しのことにも、先達はあらまほしき事なり』吉田兼好」です。

皆様は「診断エラー」という言葉をご存知でしょうか?「エラー」という言葉自体にネガティブなイメージが内包されていますが、この「診断エラー」は診療に携わるドクターであれば誰しも起こしうる可能性があります。しかしアメリカの医療過誤を後方視的に調査した研究によると「診断エラー」を他の医療エラーと比較したところ、「最も患者の死に影響していた」と報告されています。

近年、海外ではレジデントや学生に対する教育分野として、「診断エラー」が非常に注目されており、米国ではSociety to Improve Diagnosis in Medicine (SIDM)という学会が設立されている程です。残念ながら日本において「診断エラー」の注目度はお世辞にも高いとはいえません。

日本病院総合診療医学会では若手部会にて「診断エラー部門」が発足しており、群星(むりぶし)沖縄臨床研修センター長の徳田安春先生を筆頭に、診断エラーに精通する先生方にご指導いただきながら活動を進めている次第です(と偉そうに書いたものの、普段は幽霊部会員で申し訳ありません
今回は日本病院総合診療医学会の若手部会「診断エラー部門」の一員として、連載記事の一部を担当させていただきました。実際にあった症例を少々改変、簡略化した上で「診断エラー」に至ったある感染症について紹介しています。

是非ともご参照ください。

日経メディカル・診断エラー学のすすめ
「通常とは異なるプレゼンテーションを呈した症例『少しのことにも、先達はあらまほしき事なり』吉田兼好」
Posted by Hiroki Matsuura - 2021.11.13,Sat
撮っておきClinical Picture!(Cadetto.jp)更新のお知らせ(25)
日経メディカル姉妹誌で若手医師と医学生のためのサイト「Cadetto.jp」にて、2019年1月より連載中の「撮っておきClinical Picture!」ですが、2021年11月12日付で新しい記事が掲載されました。

タイトルは「若年女性の『青い眼』から想起したいあの疾患」です。
岡山市立市民病院では初期研修医に対して「女性をみたら妊娠と思え」以外にも
「女性をみたら〇〇と思え」と指導しています。〇〇に当てはまる病名は何でしょう?
侵襲性の低い「視診」の所見になりますので、明日からの診療に活用いただけますと幸いです。

ぜひともご参照ください。

以下、記事のリンクです。
プロフィール
HN:
Hiroki Matsuura
性別:
非公開
P R
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]