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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by - 2025.05.17,Sat
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Posted by Hiroki Matsuura - 2018.10.25,Thu
Clinical PictureがAcceptされました(46本目)
今回は非常に珍しい遺伝疾患に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Opposite Murphy’s sign」です。

掲載誌はなんと米国消化器病学会が発行するJournalで、消化器内科領域を扱う雑誌で最も高いImpact Factorを誇る「Gastroenterology(IF 20.773)」です!

今回の症例は発熱と突然の季肋部痛を主訴に救急外来を受診された病院嫌いの患者に未指摘の完全内臓逆位があったというものです。右季肋部痛なら急性胆嚢炎を鑑別し診断することは容易なのですが、まさか内臓逆位であったとは受診時点では想像もつきませんでした。

左季肋部にエコーを当てた瞬間、腫大した胆嚢があらわれたときには
「あ…ありのまま今起こったことを話すぜ」
「おれはやつの左季肋部にプローブを当てたと思っていたら、いつのまにか胆嚢がうつっていた」
状態でした。胆嚢って左にあったっけ?と状況を即座には理解できなかったものの、その後に撮影したポータブルレントゲンが全てを物語っていました。心臓が逆!サウザーかよ!

患者本人は病院受診はおろか、学校健診すら受けたことがないほどの病院嫌いであり、今まで内臓逆位は未指摘だったとのこと。しかし問診を進めると「そういえば兄貴が内臓逆位やって言われてたなぁ」とポツリ。濃厚な家族歴が存在しました。

初期研修医に本症例のCTを見せて「所見は?」と問うと大体眼を白黒させて混乱します。面白いです。
掲載の折にはぜひご紹介ください。

さて内臓逆位には「完全内臓逆位」「部分型内臓逆位」が存在します。前者は字面そのままであり、大きな障害を来たすことは稀とされています。しかしながら部分型ではしばしば生命に深刻な影響を与えるような奇形が存在することも稀ではありません。原因は遺伝子変異によるものですが、関連遺伝子は20種類をこえ、特定の遺伝様式をとるわけでもありません。

内臓逆位は救急外来などで大きな問題となるのは言うまでもありません。特に今回のような未指摘の患者意識障害をきたした患者では侵襲的な手技で医療事故を起こす可能性が飛躍的に高まります。完全内臓逆位に対してVATSや腹腔鏡手術を実施したという事例は、主に外科系の雑誌で症例報告が散見されるものの危険性が伴うのは自明です。

今回は身体所見としてOpposite(真逆の)Murphy兆候があったというものでした。おそらく一生会うことのないレアケースだとは思いますが左季肋部痛の鑑別(他にあるのか?)として内臓逆位も頭の片隅に置いていただければと思います。

なお本症例は2018年9月2日に開催された第1回日本臨床写真学会で発表致しました。恐らく当学会で発表されたもので初めて英文誌に掲載された症例だと考えられます。日本臨床写真学会は今年度発足した学会ですが、非常にImpressiveな症例が多数紹介され様々な媒体で現在注目されている学会です。第2回も2019年夏に予定されておりますので皆様ぜひともご参加ください(リンクはこちら)。

100本まで残り54本です。
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Posted by Hiroki Matsuura - 2018.10.20,Sat
Clinical PictureがAcceptされました(45本目)
今回は喫煙と爪に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Harlequin nail」です。

Harlequin nailQuitter's nailと呼ばれる場合があります。喫煙歴の長いヘビースモーカーでは爪の着色が認められるのですが、何らかの原因(疾病、金欠など)で突然タバコを吸わなくなると、色素沈着のない正常な爪との間にコントラストがあらわれるというものです。文章にしても想像しがたいので、「百聞は一見に如かず」ぜひ掲載誌をご参照ください。
またHarlequin nailは喫煙自体はやめていないけれどもタバコをタール量の少ない銘柄に変更した際にも起こります(論文)。

本症例はヘビースモーカーの患者が金欠家庭内ネグレクトにより数か月前から動けなくなり、タバコを止めざるを得なかったという背景がありました。

元記事のリンクはこちら(追記:2020年9月30日)

爪は外表面に出ているのにもかかわらず、なかなか診察されません。しかし爪を診れば患者の生活背景をよりダイナミックに想像でき、隠れた疾患を発見できるキッカケを得られるかもしれません。乾癬、膠原病、腎不全、感染性心内膜炎、鉄欠乏性貧血…爪を診て診断に至る疾患は多数存在します。皆さんは爪の所見から20の病名を挙げられますか?

掲載誌は英国内科学会の発行する内科系雑誌「Quarterly Journal of Medicine(IF 3.204)」になります。なんとQJMは今回の症例でAcceptが累計30本になりました。

100本まで残り55本です。
Posted by Hiroki Matsuura - 2018.10.17,Wed
Clinical PictureがAcceptされました(44本目)
今回は寄生虫疾患に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Whitish-Yellow Tapeworm」です。

掲載誌は卒後医学教育に先進的な変化をもたらした英国の非営利団体Fellowship of Postgraduate Medicine (FPM)で100年の歴史と伝統を誇る教育誌「Postgraduate Medical Journal (IF 2.078)」になります。なんとFPMの設立者はかの偉大な内科医 Sir William Osler 先生です。

今回acceptされたのは日本海裂頭条虫の症例です。日本海裂頭条虫の学名は「Diphyllobothrium nihonkaiense」であり、サクラマスやカラフトマスに寄生し、最終宿主の体内で10mにまで成長する寄生虫です。大きさの割には症状は軽微ですむことが多く、ヒトにおいては腹部膨満感や原因不明のビタミンB12欠乏などで発見されるケースが多いとされています。

近縁種のDiphyllobothrium latumとは永らく同一種と考えられてきましたが遺伝子的な差異があることが判明しており別種として認知されていますが見た目に区別はつきません。またアメリカやカナダ近海にはD. nihonkaienseは存在しないと考えられていましたが、2017年にその存在が確認され大きなニュースになりました (論文)。

いずれの裂頭条虫症でも駆虫薬であるプラジカンテルが有効です。またガストログラフィンの内服でも80%程度駆虫可能と報告されています。内視鏡的に除去する場合、駆虫薬を使用する場合にはともに頭部の排出を確認することが必要です。頭部の残存がある場合は再発する可能性があります。

今回強調したいのは裂頭条虫症は適切な調理をしていれば感染を予防できるという点です(マイナス20度で24時間以上、55℃以上で加熱5分以上)。本症例では患者は個人的に友人から頻回にサクラマスを手に入れており、冷凍処理や加熱調理することなく喫食していたことが原因でした。

A型肝炎、E型肝炎、カンピロバクター腸炎、サルモネラ腸炎、アニサキス症…いずれも生食が原因で生じる感染症ですが、本症はこれらの感染症に比べると症状は比較的穏やかで慢性的な経過をたどるため見逃されやすいと考えられます。渡航歴や旅行歴に加え、生食歴の聴取は非常に重要だということをあらためて思い出させる一例でした。

なお本症例は2018年8月末から9月にかけてドイツのWiesbadenで開催されました第17回欧州内科学会にてポスター発表をさせていただきました(学会終了後に主催学会誌に投稿しましたがRejectされました笑)。
以前の記事にも記載しましたが「学会発表」で終わり、というのは少々もったいないと考えます。発表したものをぜひぜひ「論文」として形にし、世に出すのが臨床医の使命ではないでしょうか。

100本まで残り56本です
Posted by Hiroki Matsuura - 2018.10.02,Tue
Clinical Pictureが掲載されました(27)
先日アクセプトされました「Sepsis and Leclercia adecarboxylata」「Japanese spotted fever」「Marchiafava–Bignami disease」がQuarterly Journal of Medicineの10月号に3本同時に掲載されています。

Leclercia adecarboxylata の症例は本邦初の症例報告です。またJapanese spotted fever については愛媛県における初めての死亡例でありマスコミに大々的に報道されました。Marchiafava-Bignami disease は非常に珍しいアルコール関連の神経疾患です。それぞれ分野は異なりますが思い入れのあるCaseになります。是非ともご覧ください。

以下Journal記事のリンクです。
Quarterly Journal of Medicine
Case report
Sepsis and Leclercia adecarboxylata
Quarterly Journal of Medicine
Clinical pictures
Japanese spotted fever
Marchiafava–Bignami disease
Posted by Hiroki Matsuura - 2018.10.01,Mon
Clinical PictureがAcceptされました(43本目)
今回は感染症に関連するCase ReportがAcceptされました。タイトルはEscherichia coli Rib Osteomyelitisです。掲載誌は英国内科学会の発行する内科系雑誌「Quarterly Journal of MedicineIF 3.204)」になります。

骨髄炎はほとんどの症例が細菌感染によるものであり、外傷に伴う直接感染や菌血症による散布性の血行性感染を要因とします。場所としては体内の中でも圧倒的に長管骨が多く、今回のCaseのような肋骨骨髄炎は統計的にも非常に珍しいとされています。いずれの骨髄炎においても、発熱や疼痛、体重減少など非特異的で漠然とした症状のみが継続するため診断に難渋する場合も少なくありません。多くの症例では菌血症や、骨折、膿瘍形成など重大な合併症を生じて初めて診断に至ります。治療としては早期診断と適切な抗菌薬投与、症例によっては迅速な外科的デブリードメントが必要です。

元記事のリンクはこちら(追記:2020年9月30日)
起炎菌としては黄色ブドウ球菌結核菌アクチノマイセス属菌などグラム陽性菌で起こる場合が大多数を占めるのですが、今回の症例ではグラム陰性桿菌として非常に一般的なE.coliによって生じていることも注目すべきポイントです。なおPubmedで検索したところ骨髄炎にグラム陰性菌が関与しているケースは非常に限定されており、ほとんどの症例はサルモネラ属菌によるものでした。そして検索しえた限り大腸菌による肋骨骨髄炎は本症例以外に報告はありません

非常に単純ですが珍しい症例なので形にできてよかったです。

100本まで残り57本です
プロフィール
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Hiroki Matsuura
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