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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by - 2025.04.26,Sat
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Posted by Hiroki Matsuura - 2021.05.23,Sun
Clinical PictureがAcceptされました(68本目)
今回は新型コロナウイルス感染症に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Tension Pneumoperitoneum attributable to COVID-19です。掲載雑誌はケース・ウェスタン・リザーブ大学が発行する熱帯医学・衛生専門誌として著名な「American Journal of Tropical Medicine and Hygiene(IF 2.126)」になります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年12月に中国湖北省武漢の海鮮市場周辺で流行が確認された新興感染症であり、その後初期対応のまずさなどから世界的な流行拡大(Pandemic)に至り、夥しい数の感染者と死者を出していることはご承知の通りでしょう。現在ではワクチン接種が欧米を中心に様々な国で進んでおり、徐々に正常化へ向かって動き始めています。

残念ながら本邦ではワクチン接種が遅々として進まない状況にあり、大阪府を中心とした近畿圏、沖縄県、北海道などでは流行の拡大が止まりません。さらに緊急事態宣言が新規に発令された岡山県、広島県の医療状況も危機的な状況にあります。私の勤務先である岡山市立市民病院は重点拠点病院として日々波のように押し寄せる多数のCOVID-19患者に対応し、ERでの緊急挿管も稀ではない状況となっています(記事掲載時)。

COVID-19は様々な合併症を引き起こすことが知られており、特に血液凝固能異常によって脳梗塞や肺塞栓を起こすことは医師にとって当たり前の事実になっています。その他にも小児例において川崎病類似の症候を示すケースなどが世界中から報告されています。

今回の症例は「Tension Pneumoperitoneum」、日本語で「緊張性気腹症」を生じたCOVID-19のケースです。緊張性気胸ではなく緊張性気の症例報告はPubMedで検索した限り、世界で初めてのようです。

気腹症は腸管穿孔や内視鏡検査による送気、スキューバダイビングや性行為で生じます。他にも気胸縦郭気腫などに続発することが知られています。腸管穿孔などを伴わず腹部症状を呈さないものに関しては特段の処置は必要とせず、注意深い経過観察で問題がない場合がほとんどです。実際にPubmedでもCOVID-19による無症候性の気腹症は症例報告が数例認められました。

一方で腹腔内圧が異常に高まることで静脈還流が阻害されるほどの気腹症は致死的な経過をたどる場合があり緊張性気腹症と呼ばれます。治療法は緊張性気胸と同様に、緊急脱気が必要です。今回の症例はCOVID-19患者が隔離病棟内で突然の腹部症状を訴え、異常な腹満血圧低下呼吸状態の悪化が起こり急変、CT撮影で著明な気腹を確認し18G針で速やかに脱気を行い救命に至りました。患者はその後軽快し自宅退院されています。隔離病棟内という非常に難しい特殊な状況下でありながら、多くの医療スタッフの尽力もあり非典型的なCOVID-19症例の急変事例に適切に対応出来ました。隔離病棟で働く他のスタッフにとっても印象的な症例であったので、Clinical Pictureとして形にできて素直に嬉しい限りです。

さて新型コロナウイルス感染症の流行はワクチン接種が完了するまで続きます。多くの医療機関が疲弊し一般外来や手術などにも大きな影響が出ていますが、ここが踏ん張りどころです。辛い日々が続きますが、皆様あと少しだけ一緒に頑張りましょう!

100本まで残り32本です。
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Posted by Hiroki Matsuura - 2021.05.11,Tue
Clinical Picture(Case report)が掲載されました(45)
先日アクセプトされました「Lactobacillus bacteremia: a diagnostic clue of rectal cancer」がQuarterly Journal of Medicineの2021年2月号に掲載されています。

今回の症例は突然の発熱と悪寒戦慄で搬送されてきた高齢女性の血液培養からLactobacillus属菌が検出され、悪性腫瘍による消化管粘膜の破綻から菌血症を生じたと考えてCSを実施し、未指摘の直腸癌を診断したという症例です。大腸癌に関係する菌血症の菌種としてはStreptococcus bovisClostridium septicumが非常に有名です。しかし菌血症としては決して一般的でないLactobacillus属菌が検出された場合にも消化管悪性腫瘍の検索を忘れないようにしましょう。

以下Journal記事のリンクです。
Quarterly Journal of Medicine
Case reports
Posted by Hiroki Matsuura - 2021.04.27,Tue
撮っておきClinical Picture!(Cadetto.jp)更新のお知らせ(21)
日経メディカル姉妹誌で若手医師と医学生のためのサイト「Cadetto.jp」にて、2019年1月より連載中の「撮っておきClinical Picture!」ですが、2021年4月27日付で新しい記事が掲載されました。

今回のタイトルは「かつて『死に至る病』と恐れられたあの疾患」です。
今回は本邦で疾患概念の確立された比較的珍しい呼吸器疾患を紹介しています。治療法も非常に特殊であり、偉大な先人方の弛まぬ努力で克服された「死に至る病」を取り上げました。
ぜひともご参照ください。

以下、記事のリンクです。
Posted by Hiroki Matsuura - 2021.03.10,Wed
撮っておきClinical Picture!(Cadetto.jp)更新のお知らせ(20)
日経メディカル姉妹誌で若手医師と医学生のためのサイト「Cadetto.jp」にて、2019年1月より連載中の「撮っておきClinical Picture!」ですが、2021年3月9日付で新しい記事が掲載されました。

今回のタイトルは「へその発赤・疼痛から想定されたあの疾患」です。
今回は「へそ」が痛んだとき鑑別疾患として想起すべき疾患を紹介しています。
ぜひともご参照ください。

以下、記事のリンクです。
撮っておきClinical Picture!
へその発赤・疼痛から想定されたあの疾患
Posted by Hiroki Matsuura - 2021.03.01,Mon
Clinical Pictureが掲載されました(44)
先日アクセプトされました「A forgotten disease in Japan」がEuropean Journal of Internal Medicine誌の2021年3月号に掲載されました。

今回の症例は、岡山県北部在住の高齢女性が突然の高熱と意識障害を呈して複数の医療機関を受診、状態悪化後に当院に搬送されMRIの特徴的な画像所見と髄液PCRから日本脳炎と確定診断されたケースです。

日本脳炎 (Japanese Encephalitis)」を引き起こす日本脳炎ウイルスはデングウイルスやウエストナイルウイルスと同じフラビウイルス属に分類されます。本邦における感染源はブタであり、ウイルスを持つブタを吸血した蚊(コガタアカイエカ)がヒトを刺すことによって感染します。他のアジア諸国に比べて衛生状態が非常に良好な日本では本症の発症者数は年間数人から10名ほどで推移していますが、WHOによると東南アジアを中心に年間約70000人前後の感染者が発生し、20000人前後が死亡していると推計されています。

日本脳炎ウイルスに感染した場合、発症するのは0.1%から1%程度であり大多数の症例は無症候性に経過します。しかしながらいったん発症すると30%が死亡し、生存者の半数で深刻な後遺症が残るとされています。集学的な治療が発達した現代においても日本脳炎の全治率は約30%程度であり、この30年間でほとんど変化はありません。本症に対する特異的な治療法は開発されておらず対症療法が中心になるため何よりも予防が重要となります。

潜伏期間は6-16日間で、頭痛悪心、嘔吐、高熱、急激な意識障害、項部硬直、筋強直、振戦、不随意運動を呈します。本症例でもこれらの典型的な症状が出現していました。しかし日本脳炎は前述のように発症数が非常限られており、診療経験のあるDrもほとんどいないことも影響してか、当院に搬送されるまで複数の医療機関を経由したものの全く鑑別疾患として考えられていませんでした。「日本」と冠された疾患ではありますが「日本からは忘れさられつつある疾患」という意味を込めてタイトルを付けました。

本症のMRI画像所見はT2強調画像で視床や脳幹、基底核を中心とする対称的な高信号域を示します。CTではほとんど異常は認められませんが、上記のような所見が比較的早期からあらわれるためMRIが有用です。類似する画像はヘルペス脳炎抗NMDA受容体脳炎などですが、予防接種歴のない高齢者や東南アジアからの渡航者では本症を鑑別に挙げる必要があるでしょう。

今回、本誌は初めての掲載になりますがAcceptから本掲載までの時間がわずか1か月と非常に短く、とても驚いています。ImpressiveなClinical Pictureが多く、今後も掲載を狙っていきたいJournalです。

以下Journal記事のリンクです。
European Journal of Internal Medicine
Internal Medicine Flashcards
A forgotten disease in Japan

ぜひともご参照ください

プロフィール
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