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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by - 2025.04.26,Sat
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Posted by Hiroki Matsuura - 2018.10.25,Thu
Clinical PictureがAcceptされました(46本目)
今回は非常に珍しい遺伝疾患に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Opposite Murphy’s sign」です。

掲載誌はなんと米国消化器病学会が発行するJournalで、消化器内科領域を扱う雑誌で最も高いImpact Factorを誇る「Gastroenterology(IF 20.773)」です!

今回の症例は発熱と突然の季肋部痛を主訴に救急外来を受診された病院嫌いの患者に未指摘の完全内臓逆位があったというものです。右季肋部痛なら急性胆嚢炎を鑑別し診断することは容易なのですが、まさか内臓逆位であったとは受診時点では想像もつきませんでした。

左季肋部にエコーを当てた瞬間、腫大した胆嚢があらわれたときには
「あ…ありのまま今起こったことを話すぜ」
「おれはやつの左季肋部にプローブを当てたと思っていたら、いつのまにか胆嚢がうつっていた」
状態でした。胆嚢って左にあったっけ?と状況を即座には理解できなかったものの、その後に撮影したポータブルレントゲンが全てを物語っていました。心臓が逆!サウザーかよ!

患者本人は病院受診はおろか、学校健診すら受けたことがないほどの病院嫌いであり、今まで内臓逆位は未指摘だったとのこと。しかし問診を進めると「そういえば兄貴が内臓逆位やって言われてたなぁ」とポツリ。濃厚な家族歴が存在しました。

初期研修医に本症例のCTを見せて「所見は?」と問うと大体眼を白黒させて混乱します。面白いです。
掲載の折にはぜひご紹介ください。

さて内臓逆位には「完全内臓逆位」「部分型内臓逆位」が存在します。前者は字面そのままであり、大きな障害を来たすことは稀とされています。しかしながら部分型ではしばしば生命に深刻な影響を与えるような奇形が存在することも稀ではありません。原因は遺伝子変異によるものですが、関連遺伝子は20種類をこえ、特定の遺伝様式をとるわけでもありません。

内臓逆位は救急外来などで大きな問題となるのは言うまでもありません。特に今回のような未指摘の患者意識障害をきたした患者では侵襲的な手技で医療事故を起こす可能性が飛躍的に高まります。完全内臓逆位に対してVATSや腹腔鏡手術を実施したという事例は、主に外科系の雑誌で症例報告が散見されるものの危険性が伴うのは自明です。

今回は身体所見としてOpposite(真逆の)Murphy兆候があったというものでした。おそらく一生会うことのないレアケースだとは思いますが左季肋部痛の鑑別(他にあるのか?)として内臓逆位も頭の片隅に置いていただければと思います。

なお本症例は2018年9月2日に開催された第1回日本臨床写真学会で発表致しました。恐らく当学会で発表されたもので初めて英文誌に掲載された症例だと考えられます。日本臨床写真学会は今年度発足した学会ですが、非常にImpressiveな症例が多数紹介され様々な媒体で現在注目されている学会です。第2回も2019年夏に予定されておりますので皆様ぜひともご参加ください(リンクはこちら)。

100本まで残り54本です。
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