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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by Hiroki Matsuura - 2019.12.05,Thu
1. 失踪日記2 アル中病棟
医師に勧めたい漫画を紹介します。今回ご紹介するのは先日69歳で亡くなられた漫画家 吾妻ひでお先生の「失踪日記2 アル中病棟」です。吾妻先生は「ななこSOS」などのヒット作を持ち、数々の受賞歴を持つ有名漫画家です。しかしながら低迷期に入るとアルコール依存症に陥り失踪、自殺未遂、遂には精神科病院に入院するなど破天荒な経歴を持っていました。自身の経験を軽妙なタッチで描いた本作は精神科以外の医師にとって学ぶところのとても多い名作です。本作ではアルコール依存症の症状を描いた「入院前」と「入院治療」について患者目線で描かれており、どんな教科書よりも臨場感に溢れています。

正確なデータを示すことは難しいのですが、研修病院として精神科がしっかりと存在するところは決して多くないと思われます。特に隔離病棟やアルコール依存症治療を専門に実施しているとなると非常に限られた施設、あるいは精神科単科の病院がほとんどでしょう。現在の研修形式では精神科研修は必修でありますが、ほとんどの施設では院外の精神科単科病院への短期派遣で研修が行われています。

内科であれ外科であれERに立てば問題飲酒行動を含めたアルコール関連疾患は決して珍しくありません。「あーこの患者アル中だよね」「アル中患者はちょっと…」と苦い思い出がある先生方も多いと思われますが、アルコール関連疾患の治療の原則は断酒です。特効薬がない以上、近隣の精神科との連携がこれらの疾患治療の成否に重要であることは言うまでもありません。そんな現状ですが、実際精神科病院においてアルコール依存症患者がどのような治療を受け、生活しているのかを理解している方はわずかだと思われます。本書はそんな患者の生活をコミカルに描いており、断酒会やAAの存在などアルコール依存症の患者を社会で支援する取り組みなどについても紹介しています。

吾妻先生のご冥福をお祈りするとともに本書が多くの医師・医療従事者に読まれることで、アルコール依存症に対する治療に関して、より理解が深まるきっかけになればと思います。

アル中病棟 失踪日記2 [ 吾妻ひでお ]

価格:1,430円
(2019/12/5 11:10時点)
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