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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by - 2025.04.26,Sat
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Posted by Hiroki Matsuura - 2019.05.06,Mon
Clinical PictureがAcceptされました(50本目)
今回は救急疾患に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Trench foot: A disease in the World War I」です。掲載誌はまたもや卒後医学教育に先進的な変化をもたらした英国の非営利団体Fellowship of Postgraduate Medicine (FPM)が発行している100年の歴史と伝統を誇る教育誌「Postgraduate Medical Journal (IF 2.078)」になります。

今回の症例では「Trench foot」、日本語で「塹壕足」を取り上げています。タイトルにあるように「Trench foot」がなぜ「第一次世界大戦の病気」なのか、疾患の話の前に世界史について復習しましょう。欧州各国の複雑な利害関係から勃発した第一次世界大戦は様々な新兵器が戦場に登場し、激しい戦闘により前例がないほど夥しい数の犠牲者が出た悲惨な戦争として記憶されています。この凄惨極まりない世界大戦は戦車、航空機、飛行船、毒ガスが登場した初めての戦争であるということ、そして医学の歴史においても様々な分野で多くの発見と進歩がこの悲劇的体験を通して得られていることを忘れてはなりません。

それまでの戦争と異なり第一次世界大戦では機関銃の大規模な運用が行われるようになり、従来の戦術では火線(敵の前線)を突破することが非常に難しくなったことで、塹壕戦が戦争の多くを占めるようになりました。そして兵士の仕事の多くは「塹壕堀り」になるほどに情勢が変化したようです。その負の側面として塹壕はひとたび雨が降ると水はけの悪さや衛生状態の悪化で感染症が蔓延しました。また当時の兵隊が着用していた分厚い革製のブーツに水が浸み込むことで、長時間の水曝露が生じ、結果として多くの兵士が足趾の循環障害から「塹壕足」を患い、感染症と相まって足の切断を余儀なくされるという事例が多発したのです。

上記に述べた通り、「塹壕足」とは凍傷に至らない程度の低温に長時間の曝露されることで生じる足趾の循環障害です。戦闘状態にない現代社会における塹壕足は、ホームレスなどの屋外生活者高齢者の水路転落などで認められるようです。今回の症例は独居の高齢女性が自宅風呂に落ち、救急隊に救出されるまで足が3日間水に浸かったままであったというものでした。幸いにも本症例では足趾切断に至ることもありませんでしたが、長時間にわたって寒冷曝露にあった患者では注意したい疾患のひとつです。

100本まで残り50本です。
やっと折り返し地点です!
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