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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by - 2025.04.27,Sun
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Posted by Hiroki Matsuura - 2019.08.30,Fri
Clinical Pictureが掲載されました(35)
先日アクセプトされました「Trench foot: A disease in the World War I」がPostgraduate Medical Journalの2019年9月号に掲載されています。

「塹壕足」とは凍傷に至らない程度の低温に長時間の曝露されることで生じる足趾の循環障害です。第一次世界大戦では機関銃の大規模な運用が行われるようになり、従来の戦術では火線(敵の前線)を突破することが非常に難しくなったことで、塹壕戦が戦争の多くを占めるようになりました。
兵士の仕事の多くは「塹壕堀り」になるほどに情勢が変化し、塹壕はひとたび雨が降ると水はけの悪さや衛生状態の悪化で感染症が蔓延しました。また当時の兵隊が着用していた分厚い革製のブーツに水が浸み込むことで、長時間の水曝露が生じ、結果として多くの兵士が足趾の循環障害から「塹壕足」を患い、感染症と相まって足の切断を余儀なくされるという事例が多発したのです。戦闘状態にない現代社会における塹壕足は、ホームレスなどの屋外生活者高齢者の水路転落などで認められます。

以下Journal記事のリンクです。
Postgraduate Medical Journal
Images in Medicine
Trench foot: A disease in the World War I

是非ご参照ください
※有料会員のみ閲覧可能です
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Posted by Hiroki Matsuura - 2019.08.05,Mon
Clinical PictureがAcceptされました(53本目)
今回は渡航感染症に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Dengue Rash: white islands in a sea of red」です。掲載誌はまたまたまた卒後医学教育に先進的な変化をもたらした英国の非営利団体Fellowship of Postgraduate Medicine (FPM)が発行している100年の歴史と伝統を誇る教育誌「Postgraduate Medical Journal (IF 1.946)」になります。

今回の症例は36歳の女性でタイプーケットを観光後に発熱をきたし、帰国後の血液検査で著明な血小板低下好中球減少が認められた患者です。デング熱を疑い、DENV迅速診断キットが陽性となったため保健所にてPCRを実施いただきデング熱と確定診断されました。経過中にHtの上昇と脈圧の減少があったことからCVC確保のうえ大量輸液を実施し、慎重に経過を観察しました。幸いにも重症型に移行することなく改善し退院されています。

そもそもデング熱とは蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)によって媒介され、本邦では近年マラリアを抜いて渡航感染症の報告数の首位をひた走るウイルス感染症です。詳細は成書に譲りますが、潜伏期間は3-14日間、感染者の80%は無症状で経過するものの、発症すると症状として眼痛、頭痛、筋肉痛、発熱、関節痛、嘔気、嘔吐などがあらわれ、ときに重症型へ移行し死亡する可能性があります。本症には4種類のウイルス型があり、以前に違う型に感染した既往のある患者が違う型にあらたに感染した場合には重症化の頻度が上昇します。

実は2019年になってからというもの、お世辞にも国際都市とは言えない岡山の地で、既に3例もの診断を確定させています。保健所への依頼打率も10割です。要するにデング熱はもはや Common Diseaseであり、「私には関係ない」と思っていると非常に危険、といわざるをえません。

本邦では戦後の1945年、復員者により大規模なアウトブレイクが起こりましたが、幸いなこと以降土着することなく、2014年の代々木公園デング熱事件が起こるまでは国内感染事例は皆無でした。しかし代々木公園におけるデング熱の伝播・流行というのは、感染者の血液を土着の蚊が吸血することで感染・伝播のサイクルが容易に起こりうることを示しています。海外渡航歴を聞き逃し、デング熱という鑑別が挙がらなければ周囲の公衆衛生上、大きな問題になりえます。

タイ、ベトナム、フィリピンなどデング熱の流行地域からの入国者が増える中で、本症は今後も警戒すべき感染症です。ちなみに現在バングラデシュでは非常に大規模な流行が起きておりWHOによる支援が行われていますが、当院における2例目はこのバングラデシュからの渡航者でした。

今回の写真はデング熱の解熱後、2-3日後に認められる典型的な皮疹を取り上げています。この皮疹を「White islands in a sea of red (赤い海に浮かぶ白い島々)」と呼び、渡航感染症を診られる感染症医の間では非常に有名な所見なのですが、意外なほどPubmedでは引っかかりませんでした。

解熱後にあらわれる非常に特徴的な皮膚所見ですので、これを診た場合には仮にそれまで鑑別としてデング熱が挙がっていなかったとしても(そんなことは稀でしょうが)、デング熱の解熱期を想起しなければなりません。万が一、その患者に渡航歴がなかったとしたら…。

東京五輪を控え、外国人がますます増加する中、そのような事態に陥らないためにもインバウンド立国が進む本邦で我々内科医が果たす役割は殊更大きく、地域の公衆衛生を守るために重要です。

100本まで残り47本です。
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.08.03,Sat
撮っておきClinical Picture!(Cadetto.jp)更新のお知らせ(5)
日経メディカル姉妹誌で若手医師と医学生のためのサイト「Cadetto.jp」にて、2019年1月より連載が始まりました「撮っておきClinical Picture!」ですが、8月2日付で新しい記事が掲載されました。

今回のタイトルは「感冒と診断後の発疹…ときに致死的なあの感染症」です。
ぜひともご参照ください。

以下、記事のリンクです。
撮っておきClinical Picture!
感冒と診断後の発疹…ときに致死的なあの感染症
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.07.22,Mon
Clinical PictureがAcceptされました(52本目)
今回は救急疾患に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Acute Calcific Retropharyngeal Tendinitis」です。掲載誌はまたまた卒後医学教育に先進的な変化をもたらした英国の非営利団体Fellowship of Postgraduate Medicine (FPM)が発行している100年の歴史と伝統を誇る教育誌「Postgraduate Medical Journal (IF 1.946)」になります。

今回の症例は44歳の男性が突然の頸部痛のためERを受診され「石灰沈着頚長筋腱炎」と診断されたCaseです。石灰沈着頚長筋腱炎の頻度は比較的稀ですが、頸部痛の鑑別としてしばしば忘れがちな疾患になります。本症は椎前筋を形成する頚長筋にハイドロキシアパタイトが沈着して発症します。治療はNSAIDsやステロイド、安静など保存的加療で自然軽快することが知られており、予後は極めて良好です。

頸部痛に発熱を伴う疾患は様々なものがありますが、その中でもFive Killer Sore Throatと呼ばれる疾患は緊急性が高く、生命の危険がある緊急疾患として必ず除外する必要があります。
Five Killer Sore Throat急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍、口腔底蜂窩織炎(Ludwig's angina)、Lemierre症候群、そして咽後膿瘍の5つになります。これらには開口障害流涎三脚位などの身体所見を併せて早期の診断をおこない、ときに気管挿管や気管切開などで迅速な気道確保を必要とします。

このうち咽後膿瘍では頸部のレントゲン撮影で軟部組織腫脹が認められるのですが、今回の石灰沈着頚長筋腱炎とは臨床的に非常に似た所見を示すため注意が必要です。かたや生命にかかわる緊急疾患であるというのは対応に難渋する可能性もあり、ERに来院された際には頭を悩ましそうです。

今回の症例も多分に漏れず、頸部レントゲンでは軟部組織腫脹が認められ私たちの頭を悩ましたのですが、CT撮影にて巨大な石灰沈着頚長筋腱炎を同定し、さらに3D構成まで実施、咽頭後壁の組織腫脹の推移も含めて経過をおいました。なお本邦からですがH2ブロッカーが石灰化に有効であるとの報告があったためH2ブロッカーを導入したところ、3か月後にには綺麗さっぱり病変が消失しました。現在も再発はありません。

100本まで残り48本です。
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.07.03,Wed
Clinical Pictureが掲載されました(34)
先日アクセプトされました「Acute Gastric Dilation caused by Superior Mesenteric Artery syndrome」がPostgraduate Medical Journalの2019年5月号に掲載されています。

今回はAcute Gastric Dilation(急性胃拡張)がSMA症候群によって生じたというCaseを取り上げています。そもそもSMA症候群は十二指腸水平脚Superior Mesenteric Artery(上腸間膜動脈)大動脈、あるいは脊椎に圧排されることで狭窄や閉塞をきたす疾患で若い痩せ型の女性に多いことが知られています。画像所見としてはSMAと大動脈の分岐角が正常よりも鋭角になっています。

急性胃拡張はその名の通り、過食や排出不良に伴う胃内容物の貯留で胃が拡張するという病態です。神経変性疾患や脳梗塞、糖尿病、術後再建、摂食障害、薬剤によって生じることが知られていますが本症例のようにSMA症候群でも起こりえます。SMA症候群では胃の内容物が大量に存在することで排出遅延が起こることから胃拡張を起こしやすいと考えられています。「ただの胃の拡張じゃないか」と思われる方も多いのですが、意外にも重症例が多数報告されています。

胃は支配血管が豊富であることから阻血になりにくいとされていますが、胃の急激な拡張で内部から血管が圧排され胃表面の血流が乏しくなり、最終的に組織壊死に至ると胃破裂をおこします。胃破裂を起こした場合の予後は不良であり死亡例が多数報告されていますから、本症の患者を診た際には胃管挿入による迅速な減圧が必要です。

本症例でも来院後すぐに胃管を挿入のうえ、胃表面の血流を腹部超音波検査で確認し注意深い経過観察を必要としました。さまざまな論文を確認すると急性胃拡張を起こした症例の多くで精神科疾患を有する場合が多いとされています。たとえ急性胃拡張が軽症で済んだとしても背景疾患として摂食障害がある可能性は否定できません。注意深い問診で患者の生活歴を知り、精神科や心療内科と相談しながら対応する必要があるかもしれません。

以下Journal記事のリンクです。
Postgraduate Medical Journal
Images in Medicine
Acute Gastric Dilation caused by Superior Mesenteric Artery syndrome
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