英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。
New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.07.02,Tue
Clinical Pictureが掲載されました(33)
先日アクセプトされました「Whitish-yellow tapeworm」がPostgraduate Medical Journalの2019年1月号に掲載されています。
今回掲載された日本海裂頭条虫はサクラマスやカラフトマスに寄生し、最終宿主の体内で10mにまで成長する寄生虫です。大きさの割には症状は軽微ですむことが多く、ヒトにおいては腹部膨満感や原因不明のビタミンB12欠乏などで発見されるケースが多いとされています。
強調したい点は本症を含む裂頭条虫症では適切な調理をしていれば感染を予防できるという点です(マイナス20度で24時間以上、55℃以上で加熱5分以上)。本症例では患者は個人的に友人から頻回にサクラマスを手に入れており、冷凍処理や加熱調理することなく喫食していたことが原因でした。
本症をみてサケが食べられなくなったという苦情をいただきますが、徒らにサケを避けるのは少々もったいない話です。「敵を知り己を知れば百戦あやうからず」、上記の方法で適切に処理されているサケを食べるのは全く問題ないのです。正しい知識をもって美味しいサケを堪能しましょう。
ただし豚レバー生食はダメ、ゼッタイ!
以下Journal記事のリンクです。
Postgraduate Medical Journal
Images in Medicine
「Whitish-yellow tapeworm」
※有料会員のみ購読可能です
先日アクセプトされました「Whitish-yellow tapeworm」がPostgraduate Medical Journalの2019年1月号に掲載されています。
今回掲載された日本海裂頭条虫はサクラマスやカラフトマスに寄生し、最終宿主の体内で10mにまで成長する寄生虫です。大きさの割には症状は軽微ですむことが多く、ヒトにおいては腹部膨満感や原因不明のビタミンB12欠乏などで発見されるケースが多いとされています。
強調したい点は本症を含む裂頭条虫症では適切な調理をしていれば感染を予防できるという点です(マイナス20度で24時間以上、55℃以上で加熱5分以上)。本症例では患者は個人的に友人から頻回にサクラマスを手に入れており、冷凍処理や加熱調理することなく喫食していたことが原因でした。
本症をみてサケが食べられなくなったという苦情をいただきますが、徒らにサケを避けるのは少々もったいない話です。「敵を知り己を知れば百戦あやうからず」、上記の方法で適切に処理されているサケを食べるのは全く問題ないのです。正しい知識をもって美味しいサケを堪能しましょう。
ただし豚レバー生食はダメ、ゼッタイ!
以下Journal記事のリンクです。
Postgraduate Medical Journal
Images in Medicine
「Whitish-yellow tapeworm」
※有料会員のみ購読可能です
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Posted by Hiroki Matsuura - 2019.06.29,Sat
Clinical PictureがAcceptされました(51本目)
今回は救急疾患に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Acute Behavoral Changes after a Small Fire」です。掲載誌はまたもや卒後医学教育に先進的な変化をもたらした英国の非営利団体Fellowship of Postgraduate Medicine (FPM)が発行している100年の歴史と伝統を誇る教育誌「Postgraduate Medical Journal (IF 1.946)」になります。今回の症例は80歳の女性が急激な意識変容、行動異常、動作緩慢によって救急搬送されたのですが詳細な病歴聴取とMRI検査によりCO中毒後の遅発性脳症と診断されたcaseです。来院3週間前にボヤを起こしたため同様に救急搬送されましたが、来院時のABGでもCOHbの著明な高値は認められず、酸素吸入と数日の入院加療で自宅退院されていました。MRIでは淡蒼球に特徴的な変化が認められました。
CO中毒は先進国における中毒死の原因の第一位であり、アメリカでは年間4万件発生しています。原因は不完全燃焼や火事、長時間にわたるエンジンや暖房器具の使用などが多く、比較的冬季に多く発生します。なお沖縄では台風での停電時に使用する自家用発電機によるCO中毒が多く、夏季に多発します。
CO中毒後の遅発性脳症に関しては、CO中毒後およそ2-4週間程度で発症し突然の行動変容や無動無言、失認、失行があらわれます。タイムラグがあり発見が遅れる症例があるためやはり病歴聴取が重要です。さらに本症の発症はCOHb濃度とは特に関連がありません。COHb濃度が低くても全く油断できないのです。 ただし本症はHBO(高圧酸素療法)で発症率を低下させることが近年明らかになっており、また遅発性脳症発症後もHBOが有効であったという報告がなされています。
100本まで残り49本です。
なお本CaseよりImpact Factorは新年度のものに更新されます。
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.06.12,Wed
撮っておきClinical Picture!(Cadetto.jp)更新のお知らせ(4)
日経メディカル姉妹誌で若手医師と医学生のためのサイト「Cadetto.jp」にて、2019年1月より連載が始まりました「撮っておきClinical Picture!」ですが、6月12日付で新しい記事が掲載されました。
今回取り上げた症例は角化型疥癬、いわゆる「ノルウェー疥癬」です。CCJMに投稿した症例とは別のものになりますが、経過は似ており「90歳代の施設入所中の女性に生じた下肢発赤に対してステロイド軟膏を漫然と長期使用し増悪した」というものです。本症は公衆衛生上大きな問題となる疾患なので、早期発見と治療が非常に重要な疾患です。
治療薬や対処法についても簡単に述べておりますので是非ご参照ください。
以下、記事のリンクです。
撮っておきClinical Picture!
「足趾角化部の検鏡で見えた、あの病原生物」
日経メディカル姉妹誌で若手医師と医学生のためのサイト「Cadetto.jp」にて、2019年1月より連載が始まりました「撮っておきClinical Picture!」ですが、6月12日付で新しい記事が掲載されました。
今回取り上げた症例は角化型疥癬、いわゆる「ノルウェー疥癬」です。CCJMに投稿した症例とは別のものになりますが、経過は似ており「90歳代の施設入所中の女性に生じた下肢発赤に対してステロイド軟膏を漫然と長期使用し増悪した」というものです。本症は公衆衛生上大きな問題となる疾患なので、早期発見と治療が非常に重要な疾患です。
治療薬や対処法についても簡単に述べておりますので是非ご参照ください。
以下、記事のリンクです。
撮っておきClinical Picture!
「足趾角化部の検鏡で見えた、あの病原生物」
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.05.26,Sun
英文誌の特徴(Gastroenterology編)
GastroenterologyのClinical Pictureにおける特徴をご紹介します。気を付けていただきたいのは、本記事で紹介する内容はあくまでも私見だということです。
1.歴史
Gastroenterologyは米国消化器学会の学会誌です。
2.内容
Gastroenterologyは年24回(2回/月)発行される雑誌であり、臓器別の長大な臨床研究からVideoを用いた症例報告に至るまで様々な記事が掲載されています。2018年のIFは20.773であり、消化器領域の英文誌のなかで最も高いIFを誇る世界最高の医学誌の一つです。
本誌のなかでClinical Pictureを扱うセクションは「Clinical Challenges and Images in GI」です。
3.Clinical Pictureの分量や注意点
Author informationによると
GastroenterologyのClinical Pictureにおける特徴をご紹介します。気を付けていただきたいのは、本記事で紹介する内容はあくまでも私見だということです。
1.歴史
Gastroenterologyは米国消化器学会の学会誌です。
2.内容
Gastroenterologyは年24回(2回/月)発行される雑誌であり、臓器別の長大な臨床研究からVideoを用いた症例報告に至るまで様々な記事が掲載されています。2018年のIFは20.773であり、消化器領域の英文誌のなかで最も高いIFを誇る世界最高の医学誌の一つです。
本誌のなかでClinical Pictureを扱うセクションは「Clinical Challenges and Images in GI」です。
3.Clinical Pictureの分量や注意点
Author informationによると
1. 字数は「1pageに収まる量」
2. 画像は「2枚」以内、3枚以上はSupplement file扱い
3. Referenceは「3本以下」
4. Authorは「3名以下」
5. 本セクションはクイズ形式であり「問題編」と「解答編」を作成する必要あり。
6. 本セクション投稿時には「20$」の投稿料が必要(追記:2020年9月23日)
5. Accept後
Accept後、3営業日程度でArticle in pressとして掲載されます。Accept後に2か月程度でProofの確認がありましたが、内容のチェックというよりは適切な単語への置き換え、誤植のチェックに限られ48時間以内の修正を求められます。
6.その他
事務的な対応なども「一般的」で特筆するような注意点はありません。
5. 本セクションはクイズ形式であり「問題編」と「解答編」を作成する必要あり。
6. 本セクション投稿時には「20$」の投稿料が必要(追記:2020年9月23日)
4.査読
AcceptされたClinical Pictureでは35日程度で第一報が返ってきました。そこまで厳しい修正意見が飛んできた訳ではありませんでしたが、タイトルを含め11個ほど修正を求められました。これまでの経験上NEJMについで修正数が多く、対応がそれなりに大変でした。
5. Accept後
Accept後、3営業日程度でArticle in pressとして掲載されます。Accept後に2か月程度でProofの確認がありましたが、内容のチェックというよりは適切な単語への置き換え、誤植のチェックに限られ48時間以内の修正を求められます。
6.その他
事務的な対応なども「一般的」で特筆するような注意点はありません。
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.05.06,Mon
Clinical PictureがAcceptされました(50本目)
今回は救急疾患に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Trench foot: A disease in the World War I」です。掲載誌はまたもや卒後医学教育に先進的な変化をもたらした英国の非営利団体Fellowship of Postgraduate Medicine (FPM)が発行している100年の歴史と伝統を誇る教育誌「Postgraduate Medical Journal (IF 2.078)」になります。今回の症例では「Trench foot」、日本語で「塹壕足」を取り上げています。タイトルにあるように「Trench foot」がなぜ「第一次世界大戦の病気」なのか、疾患の話の前に世界史について復習しましょう。欧州各国の複雑な利害関係から勃発した第一次世界大戦は様々な新兵器が戦場に登場し、激しい戦闘により前例がないほど夥しい数の犠牲者が出た悲惨な戦争として記憶されています。この凄惨極まりない世界大戦は戦車、航空機、飛行船、毒ガスが登場した初めての戦争であるということ、そして医学の歴史においても様々な分野で多くの発見と進歩がこの悲劇的体験を通して得られていることを忘れてはなりません。
それまでの戦争と異なり第一次世界大戦では機関銃の大規模な運用が行われるようになり、従来の戦術では火線(敵の前線)を突破することが非常に難しくなったことで、塹壕戦が戦争の多くを占めるようになりました。そして兵士の仕事の多くは「塹壕堀り」になるほどに情勢が変化したようです。その負の側面として塹壕はひとたび雨が降ると水はけの悪さや衛生状態の悪化で感染症が蔓延しました。また当時の兵隊が着用していた分厚い革製のブーツに水が浸み込むことで、長時間の水曝露が生じ、結果として多くの兵士が足趾の循環障害から「塹壕足」を患い、感染症と相まって足の切断を余儀なくされるという事例が多発したのです。
上記に述べた通り、「塹壕足」とは凍傷に至らない程度の低温に長時間の曝露されることで生じる足趾の循環障害です。戦闘状態にない現代社会における塹壕足は、ホームレスなどの屋外生活者や高齢者の水路転落などで認められるようです。今回の症例は独居の高齢女性が自宅風呂に落ち、救急隊に救出されるまで足が3日間水に浸かったままであったというものでした。幸いにも本症例では足趾切断に至ることもありませんでしたが、長時間にわたって寒冷曝露にあった患者では注意したい疾患のひとつです。
100本まで残り50本です。
やっと折り返し地点です!
プロフィール
HN:
Hiroki Matsuura
性別:
非公開
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