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英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。 New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
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Posted by - 2025.04.27,Sun
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Posted by Hiroki Matsuura - 2019.10.24,Thu
英文誌の特徴(Internal Medicine編)
Internal MedicineのClinical Pictureにおける特徴をご紹介します。今回は他誌の紹介に比べて批判が多めです。気を付けていただきたいのは、本記事で紹介する内容はあくまでも私見だということです。

1.歴史
Internal Medicineは日本内科学会から発行される英文誌です。

2.内容
Internal Medicineは年24回(2回/月・毎月2日、15日)発行される雑誌であり、臨床現場で役立ち医学教育に資する雑誌を掲げ、内科医の育成および内科学の発展に寄与することを目的(日本内科学科HPより)としています。2018年のIFは0.956であり、Case reportを多数掲載することを勘案しても少し物足りない値です。

本誌のなかでClinical Pictureを扱うセクションは「Pictures in Clinical Medicine」です。

3.Clinical Pictureの分量や注意点
Author informationによると
1. 字数は「150 words
2. 画像は「4枚以下
3. なお画像の説明文は不要です
4. Referenceは「2本以下
5. Author数は「4名以下
6. タイトルは「8 words以内
7. 日本内科学会会員に限り投稿料は無料、それ以外は「300$

4.査読
査読については規定に特別の記載があるわけではありません。特に紹介できることもないので以下に私がIMに投稿した際に経験した幾つかの出来事について紹介します。

【字数制限】
上述したとおり「150 wordsが制限」とAuthor Informationに記載があります。150 wordsが制限の英文誌といえばNEJMが有名ですが、提出の際には150 wordsを超過し200 wordsを超えていることも少なくありません。しかしながらIMでは157 wordsであっても字数制限のため修正提出を要求されました。10%程度の超過は一般的に許容範囲なのではないでしょうか。

それについて問い合わせメールを送ったところ「規定では150 words以内としておりますが、10 words程度の超過は認めているため、IM-受付番号-17-Pは受付させていただきました」との返信が…。
 
【査読期間がとにかく長い】
AcceptされたClinical Pictureはこれまで2本ありました。最初にアクセプトされた症例(Uvula Hematoma)では提出から30日程度で第一報が返ってきました。2本目(Calcium channel blocker-induced gingival overgrowth)に関してはなんと150日の査読期間を要しました。90日経過してもScholar One ManuscriptのStatusすら変化がないため、業を煮やして問い合わせをしたところ、事務局よりすぐに返信はあったもののさらに60日経過してから返信がありました。

NEJMでは90日程度かかる場合もザラにあり(200日でのReject経験もあり)、査読期間が長いものだという心構えがありましたが、IMでここまで待たされるとは思ってもみませんでした。QJMやGastroenterologyの1週間、CMAJのきっかり14日間に慣れている身としてはClinical Pictureの分野でこの期間はどうなの?と疑問を感じざるをえません(CCJMもかなり長いですが60日は今のところ超えていません)。

このCaseに関しては写真として非常に綺麗であったので、IFの低さも併せると他誌に投稿すれば良かったと本当に後悔しています。

【謎の理由でReject】
最後にRejectされたCaseについて記載します。ある症例を提出したところ数点の修正事案がありました。Reviewerの指摘に沿って修正をし再提出を行ったところ「前回のコメントに対する修正が不十分です。Imageだけでは得るものが少ないので病態生理も併せて検討できる症例報告へ再投稿を」とだけ記載がありReject…3ヵ月以上の時間が経過していました。「前回のコメントに対する修正が不十分」だけであれば納得しますが、後半に関しては全くもって意味がわかりません。じゃあなぜMinor Revisionという返信をしたのかと問いたくなります。結局そのCaseは他誌に投稿し現在修正待ちとなっています。

査読者はボランティアであり、業務の合間をぬって評価をいただいていることは重々承知です。しかしながら、その他IMに投稿経験のある医師(Clinical Picture以外でも)に話を聞くと、IMでは今回のような事態は私に限らず、いろいろなところでしばしば起きているように思われます。

CMAJのように査読の流れをすべて公開せよ、とまではいいませんがもう少し改善の余地があるのではないでしょうか。以上のようなことが続いていますので、私がIMの「Pictures in Clinical Medicine」に投稿することは今後しばらくありませんし、そしてオススメすることもありません。

5. Accept後
Accept後、1-2週間程度でArticle in pressとして掲載されます。Accept後に3-4か月程度でProofの確認がありましたが特筆するような注意点はありません。

6.その他
事務的な対応は日本語でできるのが強みです。逆にIMで良いところはそこだけです。繰り返しになりますが本記事で紹介した内容はあくまでも私見です。IMが良いと思う方は是非今後も投稿してください。
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Posted by Hiroki Matsuura - 2019.10.18,Fri
Clinical PictureがAcceptされました(56本目)
今回は急激な浸透圧変化によって生じる脱髄疾患についてのClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Mexican hat sign」です。掲載誌はまたまたまた卒後医学教育に先進的な変化をもたらした英国の非営利団体Fellowship of Postgraduate Medicine (FPM)が発行している100年の歴史と伝統を誇る教育誌「Postgraduate Medical Journal (IF 1.946)」です。

浸透圧脱髄症候群(橋中心性髄鞘崩壊)とは慢性的な低栄養状態やアルコール中毒、尿崩症や悪性腫瘍などに伴った長期的な低Na血症の急激な補正により脱髄を生じる疾患です。橋底部に病変を生じるのが典型例であり以前は橋中心性髄鞘崩壊(CPM:Central Pontine Myelinolisys )と呼ばれていましたが、橋以外に病変が生じる場合もあり、現在では浸透圧脱髄症候群(ODS:Osmotic Demyelination Syndrome)と呼ばれるようになっています。

上述した通り本症は低Na血症の補正速度が速すぎることが発症原因であり、Naの補正速度を10mEq/L/day以内に抑える必要があるとされていますが、8mEq/L/dayでも発症したという報告もあるようです。また慢性的な低Na血症だけでなく、高Na血症の補正でも本症を発症したという症例報告も散見されます

ODSの症状としては意識障害、嚥下障害、構音障害、傾眠、無動、無言、弛緩性四肢麻痺などが進行性に生じ、重度のものでは閉じ込め症候群に陥る場合もあるようです。

本症ではMRIにてDWIやT2強調像で橋底部中心に、まるでメキシコ人の被る帽子のような特徴的な高信号域(Mexican hat sign)を呈します。病歴や症状と併せて本症が疑わしい場合にはMRIが確定診断に有用です。ただし発症直後ではMRIの画像所見は偽陰性になるので注意が必要となります(3-4週間程度)。

治療に関してはControversyな点、施設間での違いも大きいため言及しませんが、本症についてはやはり予防が重要な疾患になります。低Na血症を診た際には「もしかして慢性的な低Na血症ではないか」と頭の片隅に置きながら、病歴を注意深くとり補正を開始することが大切でしょう。

100本まで残り44本です
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.10.17,Thu
Clinical PictureがAcceptされました(55本目)
今回は若年女性に苛烈な右上腹部痛を生じる性感染症に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Right upper quadrant pain with positive Murphy's sign in 19-year-old woman」です。

掲載誌はまたしても米国消化器病学会が発行するJournalで、消化器内科領域を扱う雑誌で最も高いImpact Factorを誇る「Gastroenterology(IF 19.233)」です。

今回は突然発症の激しい右上腹部痛を呈した若年女性が問診などから性感染症が疑われ、造影CTで特徴的な画像所見を指摘、Fitz-Hugh-Curtis症候群(FHCs)と診断された症例になります。

そもそもFHCsとは骨盤内炎症性疾患(PID)が上行性に腹膜や肝被膜に波及し肝周囲炎をきたしたもので、原因菌の大多数をChlamydia trachomatisが、次いでNeisseria gonorrhoeaeが占めます。症状として急性発症の激しい右上腹部痛を来たすことから急性胆嚢炎など消化器疾患との鑑別が必要であり、症状の強さから婦人科外来でなくしばしばERに搬送される場合があります。

FHCsは慢性期に移行すると慢性的な上腹部痛などで症状が目立たなくなります。より発見は難しくなることは想像に難くないですが、特にChlamydia感染では不妊や異所性妊娠などを来たす可能性が高まるため、早期発見と治療が将来の妊孕性の維持という点で重要でしょう。

今回投稿した画像にも示されているのですが、画像所見として造影CTが非常に有用であり、早期相において特徴的な肝被膜の濃染像を呈します。

腹痛=消化器疾患と短絡的に考えたくなる症例もありますが、性的活動期にあたる若年女性で右上腹部痛を伴う症例では、性行動についての注意深い問診と性感染症の検索を忘れないようにしましょう。近年では梅毒が激増(岡山県は不名誉ながら全国第3位)しており、公衆衛生上にも大きな問題になっているため、性感染症を診断した場合には他の病原体感染を合併している可能性を考慮し精査を進めてください。そしてパートナーの受診を促し、ピンポン感染を食い止めることも必要です。

100本まで残り45本です
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.10.11,Fri
撮っておきClinical Picture!(Cadetto.jp)更新のお知らせ(6)
日経メディカル姉妹誌で若手医師と医学生のためのサイト「Cadetto.jp」にて、2019年1月より連載中の「撮っておきClinical Picture!」ですが、9月24日付で新しい記事が掲載されました。

今回のタイトルは「爪の大部分が白色に変化するあの所見」です。
ぜひともご参照ください。

以下、記事のリンクです。
撮っておきClinical Picture!
爪の大部分が白色に変化するあの所見
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.09.25,Wed
Clinical PictureがAcceptされました(54本目)
今回は腹部血管の狭窄を伴う非常に珍しい疾患についてのClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Intermittent severe epigastric pain and abdominal bruit varying with respiration」です。

掲載誌は米国消化器病学会が発行するJournalで、消化器内科領域を扱う雑誌で最も高いImpact Factorを誇る「Gastroenterology(IF 19.233)」です。

今回の症例は、およそ3年間にわたって徐々に増悪し、間歇的に生じる耐え難い腹部疝痛のため岡山市立市民病院総合内科を受診された患者です。私の外来に来られるまで、県内外の少なくとも7つの総合病院を受診されましたが原因の特定には至っていませんでした。

腹痛の性状は内臓痛であるものの、明らかな腹膜刺激徴候はなく、体位による疼痛の変化も認められませんでした。しかしながら腹部聴診で呼吸性に変動する血管雑音が聴取されたためDoppler超音波検査を実施し、腹腔動脈の流速を計測しました。呼気と吸気で流速に大きな変動(呼気で流速UP)が認められたことから造影CTを撮影したところ、腹腔動脈起始部に狭窄が生じ、狭窄部以降の動脈径の拡大が認められたため正中弓状靭帯圧迫症候群(Celiac Artery Compression Syndrome:CACS)と診断しました。CACSと診断後、腹腔鏡下で正中弓状靭帯切離術を実施したところ、患者の腹痛および腹部の血管雑音は完全に消失しました。

CACSは非常に珍しい疾患であり、医師の間でも認知されているとはいいがたい疾患です。男性に比べて女性に多く、一般的には20-40歳代に好発するとされています。有病率は判明していないものの解剖学的異常として正中弓状靭帯による腹腔動脈狭窄は0.2-6%程度存在するという報告もあります。しかしながら多くの症例では側副血行路の発達などで無症状です。

そもそも正中弓状靭帯とはなにか?正中弓状靭帯は左横隔膜と右横隔膜を椎体前面で結ぶ非常に堅強な構造物です。これが何らかの原因で伸長、肥厚した場合に腹腔動脈を圧排し本症を引き起こします。

症状として特異的なもの存在せず、嘔気、嘔吐、下痢、食後の腹痛、間歇的な心窩部痛や胸やけなどがあらわれます。呼吸性変動を伴う腹部の血管雑音に関しても、決して特異的な身体所見ではありません。実際外来診療をしているとこれらの血管雑音は痩せ型の女性患者の多くで聴取が可能です。ただし鑑別疾患の一つとしてCACSを想起することは忘れてはなりません。

今回は運よくCACSを特定し、治療を完遂することができました。しかしCACS自体の認知度の低さや非特異的な症状から、本症が鑑別疾患に挙がらず不定愁訴として潜在的に見逃されている可能性は否定できません。実際に本症例でも患者さんは精神科の受診を多数の医師に勧められており医療不信に陥っていました。

原因不明の腹部症状が遷延している若年女性に呼吸性変動を伴う血管雑音を聴取した際にはCACSを鑑別疾患の一つとして忘れないようにしましょう。

なお本症例は2019年9月14-15日に佐賀県で開催された第19回日本病院総合診療医学会でポスター発表致しました。

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