英文誌への投稿を始めたばかりの後期研修医のブログです。
New England Journal of Medicine の「Images in clinical medicine」への掲載を目標に頑張ります。
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.09.25,Wed
Clinical PictureがAcceptされました(54本目)
今回は腹部血管の狭窄を伴う非常に珍しい疾患についてのClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Intermittent severe epigastric pain and abdominal bruit varying with respiration」です。掲載誌は米国消化器病学会が発行するJournalで、消化器内科領域を扱う雑誌で最も高いImpact Factorを誇る「Gastroenterology(IF 19.233)」です。
今回の症例は、およそ3年間にわたって徐々に増悪し、間歇的に生じる耐え難い腹部疝痛のため岡山市立市民病院総合内科を受診された患者です。私の外来に来られるまで、県内外の少なくとも7つの総合病院を受診されましたが原因の特定には至っていませんでした。
腹痛の性状は内臓痛であるものの、明らかな腹膜刺激徴候はなく、体位による疼痛の変化も認められませんでした。しかしながら腹部聴診で呼吸性に変動する血管雑音が聴取されたためDoppler超音波検査を実施し、腹腔動脈の流速を計測しました。呼気と吸気で流速に大きな変動(呼気で流速UP)が認められたことから造影CTを撮影したところ、腹腔動脈起始部に狭窄が生じ、狭窄部以降の動脈径の拡大が認められたため正中弓状靭帯圧迫症候群(Celiac Artery Compression Syndrome:CACS)と診断しました。CACSと診断後、腹腔鏡下で正中弓状靭帯切離術を実施したところ、患者の腹痛および腹部の血管雑音は完全に消失しました。
CACSは非常に珍しい疾患であり、医師の間でも認知されているとはいいがたい疾患です。男性に比べて女性に多く、一般的には20-40歳代に好発するとされています。有病率は判明していないものの解剖学的異常として正中弓状靭帯による腹腔動脈狭窄は0.2-6%程度存在するという報告もあります。しかしながら多くの症例では側副血行路の発達などで無症状です。
そもそも正中弓状靭帯とはなにか?正中弓状靭帯は左横隔膜と右横隔膜を椎体前面で結ぶ非常に堅強な構造物です。これが何らかの原因で伸長、肥厚した場合に腹腔動脈を圧排し本症を引き起こします。
症状として特異的なもの存在せず、嘔気、嘔吐、下痢、食後の腹痛、間歇的な心窩部痛や胸やけなどがあらわれます。呼吸性変動を伴う腹部の血管雑音に関しても、決して特異的な身体所見ではありません。実際外来診療をしているとこれらの血管雑音は痩せ型の女性患者の多くで聴取が可能です。ただし鑑別疾患の一つとしてCACSを想起することは忘れてはなりません。
今回は運よくCACSを特定し、治療を完遂することができました。しかしCACS自体の認知度の低さや非特異的な症状から、本症が鑑別疾患に挙がらず不定愁訴として潜在的に見逃されている可能性は否定できません。実際に本症例でも患者さんは精神科の受診を多数の医師に勧められており医療不信に陥っていました。
原因不明の腹部症状が遷延している若年女性に呼吸性変動を伴う血管雑音を聴取した際にはCACSを鑑別疾患の一つとして忘れないようにしましょう。
なお本症例は2019年9月14-15日に佐賀県で開催された第19回日本病院総合診療医学会でポスター発表致しました。
100本まで残り46本です
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Posted by Hiroki Matsuura - 2019.08.30,Fri
Clinical Pictureが掲載されました(35)
先日アクセプトされました「Trench foot: A disease in the World War I」がPostgraduate Medical Journalの2019年9月号に掲載されています。
「塹壕足」とは凍傷に至らない程度の低温に長時間の曝露されることで生じる足趾の循環障害です。第一次世界大戦では機関銃の大規模な運用が行われるようになり、従来の戦術では火線(敵の前線)を突破することが非常に難しくなったことで、塹壕戦が戦争の多くを占めるようになりました。
兵士の仕事の多くは「塹壕堀り」になるほどに情勢が変化し、塹壕はひとたび雨が降ると水はけの悪さや衛生状態の悪化で感染症が蔓延しました。また当時の兵隊が着用していた分厚い革製のブーツに水が浸み込むことで、長時間の水曝露が生じ、結果として多くの兵士が足趾の循環障害から「塹壕足」を患い、感染症と相まって足の切断を余儀なくされるという事例が多発したのです。戦闘状態にない現代社会における塹壕足は、ホームレスなどの屋外生活者や高齢者の水路転落などで認められます。
以下Journal記事のリンクです。
Postgraduate Medical Journal
Images in Medicine
「Trench foot: A disease in the World War I」
是非ご参照ください
※有料会員のみ閲覧可能です
先日アクセプトされました「Trench foot: A disease in the World War I」がPostgraduate Medical Journalの2019年9月号に掲載されています。
「塹壕足」とは凍傷に至らない程度の低温に長時間の曝露されることで生じる足趾の循環障害です。第一次世界大戦では機関銃の大規模な運用が行われるようになり、従来の戦術では火線(敵の前線)を突破することが非常に難しくなったことで、塹壕戦が戦争の多くを占めるようになりました。
兵士の仕事の多くは「塹壕堀り」になるほどに情勢が変化し、塹壕はひとたび雨が降ると水はけの悪さや衛生状態の悪化で感染症が蔓延しました。また当時の兵隊が着用していた分厚い革製のブーツに水が浸み込むことで、長時間の水曝露が生じ、結果として多くの兵士が足趾の循環障害から「塹壕足」を患い、感染症と相まって足の切断を余儀なくされるという事例が多発したのです。戦闘状態にない現代社会における塹壕足は、ホームレスなどの屋外生活者や高齢者の水路転落などで認められます。
以下Journal記事のリンクです。
Postgraduate Medical Journal
Images in Medicine
「Trench foot: A disease in the World War I」
是非ご参照ください
※有料会員のみ閲覧可能です
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.08.05,Mon
Clinical PictureがAcceptされました(53本目)
今回は渡航感染症に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Dengue Rash: white islands in a sea of red」です。掲載誌はまたまたまた卒後医学教育に先進的な変化をもたらした英国の非営利団体Fellowship of Postgraduate Medicine (FPM)が発行している100年の歴史と伝統を誇る教育誌「Postgraduate Medical Journal (IF 1.946)」になります。今回の症例は36歳の女性でタイのプーケットを観光後に発熱をきたし、帰国後の血液検査で著明な血小板低下と好中球減少が認められた患者です。デング熱を疑い、DENV迅速診断キットが陽性となったため保健所にてPCRを実施いただきデング熱と確定診断されました。経過中にHtの上昇と脈圧の減少があったことからCVC確保のうえ大量輸液を実施し、慎重に経過を観察しました。幸いにも重症型に移行することなく改善し退院されています。
そもそもデング熱とは蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)によって媒介され、本邦では近年マラリアを抜いて渡航感染症の報告数の首位をひた走るウイルス感染症です。詳細は成書に譲りますが、潜伏期間は3-14日間、感染者の80%は無症状で経過するものの、発症すると症状として眼痛、頭痛、筋肉痛、発熱、関節痛、嘔気、嘔吐などがあらわれ、ときに重症型へ移行し死亡する可能性があります。本症には4種類のウイルス型があり、以前に違う型に感染した既往のある患者が違う型にあらたに感染した場合には重症化の頻度が上昇します。
実は2019年になってからというもの、お世辞にも国際都市とは言えない岡山の地で、既に3例もの診断を確定させています。保健所への依頼打率も10割です。要するにデング熱はもはや Common Diseaseであり、「私には関係ない」と思っていると非常に危険、といわざるをえません。
本邦では戦後の1945年、復員者により大規模なアウトブレイクが起こりましたが、幸いなこと以降土着することなく、2014年の代々木公園デング熱事件が起こるまでは国内感染事例は皆無でした。しかし代々木公園におけるデング熱の伝播・流行というのは、感染者の血液を土着の蚊が吸血することで感染・伝播のサイクルが容易に起こりうることを示しています。海外渡航歴を聞き逃し、デング熱という鑑別が挙がらなければ周囲の公衆衛生上、大きな問題になりえます。
タイ、ベトナム、フィリピンなどデング熱の流行地域からの入国者が増える中で、本症は今後も警戒すべき感染症です。ちなみに現在バングラデシュでは非常に大規模な流行が起きておりWHOによる支援が行われていますが、当院における2例目はこのバングラデシュからの渡航者でした。
今回の写真はデング熱の解熱後、2-3日後に認められる典型的な皮疹を取り上げています。この皮疹を「White islands in a sea of red (赤い海に浮かぶ白い島々)」と呼び、渡航感染症を診られる感染症医の間では非常に有名な所見なのですが、意外なほどPubmedでは引っかかりませんでした。
解熱後にあらわれる非常に特徴的な皮膚所見ですので、これを診た場合には仮にそれまで鑑別としてデング熱が挙がっていなかったとしても(そんなことは稀でしょうが)、デング熱の解熱期を想起しなければなりません。万が一、その患者に渡航歴がなかったとしたら…。
東京五輪を控え、外国人がますます増加する中、そのような事態に陥らないためにもインバウンド立国が進む本邦で我々内科医が果たす役割は殊更大きく、地域の公衆衛生を守るために重要です。
100本まで残り47本です。
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.08.03,Sat
撮っておきClinical Picture!(Cadetto.jp)更新のお知らせ(5)
日経メディカル姉妹誌で若手医師と医学生のためのサイト「Cadetto.jp」にて、2019年1月より連載が始まりました「撮っておきClinical Picture!」ですが、8月2日付で新しい記事が掲載されました。
今回のタイトルは「感冒と診断後の発疹…ときに致死的なあの感染症」です。
ぜひともご参照ください。
以下、記事のリンクです。
撮っておきClinical Picture!
「感冒と診断後の発疹…ときに致死的なあの感染症」
日経メディカル姉妹誌で若手医師と医学生のためのサイト「Cadetto.jp」にて、2019年1月より連載が始まりました「撮っておきClinical Picture!」ですが、8月2日付で新しい記事が掲載されました。
今回のタイトルは「感冒と診断後の発疹…ときに致死的なあの感染症」です。
ぜひともご参照ください。
以下、記事のリンクです。
撮っておきClinical Picture!
「感冒と診断後の発疹…ときに致死的なあの感染症」
Posted by Hiroki Matsuura - 2019.07.22,Mon
Clinical PictureがAcceptされました(52本目)
今回は救急疾患に関するClinical PictureがAcceptされました。タイトルは「Acute Calcific Retropharyngeal Tendinitis」です。掲載誌はまたまた卒後医学教育に先進的な変化をもたらした英国の非営利団体Fellowship of Postgraduate Medicine (FPM)が発行している100年の歴史と伝統を誇る教育誌「Postgraduate Medical Journal (IF 1.946)」になります。今回の症例は44歳の男性が突然の頸部痛のためERを受診され「石灰沈着頚長筋腱炎」と診断されたCaseです。石灰沈着頚長筋腱炎の頻度は比較的稀ですが、頸部痛の鑑別としてしばしば忘れがちな疾患になります。本症は椎前筋を形成する頚長筋にハイドロキシアパタイトが沈着して発症します。治療はNSAIDsやステロイド、安静など保存的加療で自然軽快することが知られており、予後は極めて良好です。
頸部痛に発熱を伴う疾患は様々なものがありますが、その中でもFive Killer Sore Throatと呼ばれる疾患は緊急性が高く、生命の危険がある緊急疾患として必ず除外する必要があります。
※Five Killer Sore Throatは急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍、口腔底蜂窩織炎(Ludwig's angina)、Lemierre症候群、そして咽後膿瘍の5つになります。これらには開口障害や流涎、三脚位などの身体所見を併せて早期の診断をおこない、ときに気管挿管や気管切開などで迅速な気道確保を必要とします。
このうち咽後膿瘍では頸部のレントゲン撮影で軟部組織腫脹が認められるのですが、今回の石灰沈着頚長筋腱炎とは臨床的に非常に似た所見を示すため注意が必要です。かたや生命にかかわる緊急疾患であるというのは対応に難渋する可能性もあり、ERに来院された際には頭を悩ましそうです。
今回の症例も多分に漏れず、頸部レントゲンでは軟部組織腫脹が認められ私たちの頭を悩ましたのですが、CT撮影にて巨大な石灰沈着頚長筋腱炎を同定し、さらに3D構成まで実施、咽頭後壁の組織腫脹の推移も含めて経過をおいました。なお本邦からですがH2ブロッカーが石灰化に有効であるとの報告があったためH2ブロッカーを導入したところ、3か月後にには綺麗さっぱり病変が消失しました。現在も再発はありません。
100本まで残り48本です。
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